ギリシャ神話は、国を超えて世界中で知られ、特に欧米ではギリシャ神話は必須の教養であり、ギリシャ神話からの引用はごく普通に行われ、引用箇所や、さらに引用の意図が分からないと知的なコミュニケーションに支障が生じる場合があるほどだ。
神話というものは、もちろん、史実ではないのだが、極めて重要な点がある。
神話は、1人の人間が作ったものではなく、また、大勢の人間が話し合って出来たものでもなく、複雑に見えても何か純粋な原理が作用して構築されたに違いなく、人間の内面の奥深く(魂すら)を神秘的に描写したものだ。
それは、ギリシャ神話はもちろん、インドの『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』、ヘブライを中心とした『旧約聖書』、日本の『古事記』も同じことで、人間存在を超えて宇宙を感知することすら出来るが、そのためには、思考を超えた英知が必要になる。
従って、神話の正しい解釈は極めて難しく、専門家と言われる先生方がいろいろな解釈を示すが、どんな偉い先生でも、せいぜいが、「まあ、割と良い解釈」程度のことしか出来ない。
だが、宇宙の情報や力の秘密が、神(あるいは仏)の名の中に精妙かつ絶妙に封じられていて、その名に意識を向けることで、誰でも簡単に力と英知に触れることが出来る。
だから、神の名を心で唱える行であるナーマスマラナは、最高の行なのである。念仏もその一種である。

ギリシャ神話は神の名の宝庫でもある。
もちろん、各国によって発音に違いはあるが、それ(発音の違い)は高次の力で調整されるのであり、全く問題がない(ごく一部に例外があり、正確に発音しなければならない名もあるが、それは、禁忌の意味でそうなっているのであり、よほど危ないことをするのでない限り問題ない)。
ギリシャ神話の最高位の神は、神々の王ゼウスであることは当然だが、アリストテレスの『魂について』から考えると、特に重要な神は、まずゼウス、ゼウスの後継者と考えられている太陽神アポローン、そして、女でなければ(あるいは女であってもだが)ゼウスを超えたかもしれなかった女神アテーナの3神である。
そんなわけで、ゼウス、アポローン、アテーナの名は極めて強力であるが、強力過ぎて、唱える方もよほど真摯でないと、バチが当たるというのではないが、ある種の緊張を余儀なくされる。
ゼウス、アポローン、アテーナを含む「オリュンポス十二神」が最高格の神であるので、先の3神以外では、ヘーラー(ゼウスの実姉で正妻)、アプロディーテー(ヴィーナス。愛と美の女神)、アレース(戦いの神)、アルテミス(月の女神)、デーメーテール(ゼウスの実姉。豊穣の女神)、ヘパイストス(技術の神)、ヘルメース(知の神)、ポセイドーン(海の神)、ヘスティア―(ゼウスの実姉。炉の女神)らが、最高位に君臨する神々である。
また、冥界の王ハーデスと、その妻ペルセポーネも、オリュンポス十二神と同格とされ、場合によっては、十二神に含むこともある。

面白いのは、ゼウスがオリュンポスを平定した時の敵であったティターン族の神でありながら、勝利した後もゼウスは女神ヘカテーの強大な権力を奪わなかった。
ヘカテーは、『リボンの騎士』や『灼眼のシャナ』では、小悪魔的な美少女として描かれている(『リボンの騎士』ではヘケート)通り、少女神と考えられているが、謎の多い深みのある存在で、信仰者も多い。

愛と美を得たければアプロディーテ(ヴィーナス)の名を唱えたり、戦いに勝ちたければアレース(軍神マルス)の名を唱えたりするものだが、ご存じの通り、ギリシャ神話の神は、やや気紛れなところもあるので、機嫌を損ねないよう、真摯に唱えなければならない。
他にも多くの有力な神が存在し、私のお気に入りを挙げると、正義の女神アストライアーがいて、私もこの名を唱えることがある。
シェイクスピアやエマーソンすら、アストライアーを敬愛しており、シェイクスピアは『タイタス・アンドロニカス』で言及し、エマーソンは『アストライアー』という詩を書いている。
SF小説『BEATLESS』では、アストライアーは世界に39基存在する超高度AIの中でも中心的存在で、ヒロインのレイシア(40基目の超高度AIと噂される)と対立する。このアストライアーは大人の事情を内包するので、暗い部分もあるが、やはり、正義の女神の名を冠するだけのことはあった。

『ギリシャ神話』は、何を読んだら良いのか難しい。
名著と呼ばれるものでも、まるで辞書のような解説書であったり、人類の最高傑作と呼ばれるものは壮大過ぎてハードルが高い。
1つの手として、漫画で概要を掴むと共に、ヘシオドスの『神統記』を読むことをお勧めする。








  
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