「法華経講義」だの「歎異抄を読む」だの、仏教の経典を解説する本に対しては、私は、憂鬱になるほどイメージが悪い。
なぜなら、そんな本には、著者の「我」というものが強く込められていて、気持ちが悪いからだ。
もし、著者が自分の「我」をまるで込めずに解説出来たら、それは名著だろう。
そこまでいかなくても、せめて、著者が出来る限り自分の我を込めずに書いてくれれば、著者の知識が生きるだろうにと思う。
だが、残念ながら、多くの経典解説書が、著者の「我」まみれの気色悪いものだ。
人間の「我」なんて、本当に醜いものであると思う。

立花大敬氏の『劇的に運が良くなるお経 般若心経・延命十句観音経篇』という本がある。
内容は、般若心経、あるいは、延命十句観音経(以降、「十句観音経」)というお経を唱えれば、運が良くなるし、願いが叶うというものだ。
なぜ、そうなるのかという理論面は、かなり良いと思った。
また、著者自身や著者の知人の数多い実証体験もあると主張し、いくつか取り上げておられるが、それらに関しては、調べようがないので話半分で見れば良いと思う。
そして、般若心経や十句観音経の意訳も書かれていたが、これまでに沢山ある、専門家の意訳の中では、かなり良い方であると思う。

書いてあることに間違いはなく、確かに、般若心経や十句観音経を唱えれば、願いが叶うと思う。
しかし、この著者が書いているように、「お経を唱える時は、結跏趺坐か静坐で」というところで、もうアウトだろう。そんなことは、よほどのマニアでないとやらないだろう。
他にも、いろいろ難しい注文を出していたように思う。
そもそも、普通の人は般若心経を憶えたりしない。
もっと短い十句観音経でも疑わしい。
しかし、本自体は良いので、参考にしても良いと思う。

別に、般若心経や十句観音経でなくても良いのである。
南無阿弥陀仏や南無観世音菩薩、あるいは、南無弥勒菩薩といった念仏、あるいは、南無妙法蓮華経で良いのである。
その本(『劇的に運が良くなるお経』)の理論面の多くが、これらの念仏にもそのまま当てはまるので、そこは有難い。
ところで、大栗道榮氏の『ポケット 心の旅 法華経』という本があり、その中の観音経のところに、観音様に頼る方法が書かれている。
単に、「オン、アロリキャ、ソワカ」という観音様の真言を唱えれば良いだけである。
しかし、観音様の真言は他にも沢山あり、この本では、それらも次々出してくる。
それでもう、誰も唱えなくなる。そんなに覚えられないのである。無論、別に全部覚えなくても良いのだが、「覚えろ」と言われているような気になるのではないだろうか?
専門家やマニアは、そこらへんに気がつかない。
皆、ズボラというのではないが、他にやることが沢山あって忙しいのである。
しかし、法然という人は、庶民のそういったところをよく分かっていて、南無阿弥陀仏だけで良いのだと、はっきり言い切った。
法然は、全く自我のない、本当に偉い人であり、だから、あの一休さんも感服させたのである。

だが、残念・・・かどうかは分からないが、法然は、「念仏は死後、極楽浄土に行くため」だけの手段であるかのように教えた。
確かに、それは、当時としては仕方がなかったかもしれない。
そこで、法然の弟子の親鸞は、「いや、念仏は万能なのです。現世利益もバッチリです」と、『現世利益和讃』を書いたが、こちらは、あまり知られていない。
だが、念仏の現世利益方面は一部ではよく伝わり、江戸末期から昭和初期にかけ、「妙好人」と呼ばれる、念仏で楽しい一生を送る、一種の念仏仙人みたいな人達を多数生んだ。
ただ、残念なことに、妙好人に関しては、難しい本ばかりで、分かり易いピンとくる本がないと思う。

はっきり言えば、お経でも、念仏でも、あるいは、真言でも、神や仏の名でも何でも良いのだと思う。
ひたすら唱えれば運が良くなり願いが叶う。
インドの聖者サイババは、「今の時代、神の名を唱えるくらいのことしか出来ないでしょう」という『ナーマスマラナ』という本を書いてくれている。
サイババの良い評判も悪い評判も、あまり信じない方が良い。ほとんどがデマだから。
ただ、サイババが言っていることのみから、各自で判断すれば良い。
それで言うなら、私は、サイババはかなり合格と思う。

結跏趺坐や静坐が好きなら、そのようにすれば良いが、ソファーにゆったり座っても寝転んでも構わない。
般若心経や十句観音経が好きなら、それを唱えれば良い。
しかし、無理だと思ったら、念仏、真言、神や仏の名の中から好きなものを唱えれば良い。
こう言っては何だが、効果はどれでも変わらない。サイババも、そう言っていたのだと思う。
五井昌久氏は、「世界平和の祈り」を唱えるよう教えておられたが、やはり、寝転びながらでも良いし、声に出しても、心の中で唱えても良いし、祈り言葉を間違えても構わないと述べておられた。
個人的には、正直、世界平和の祈りは好きではないが、五井さんという人物は偉い人であると思う。








  
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