同じ本を読んだ人と、その本について話をしたら、共に、同じ箇所が強く印象に残っていたというのは楽しいものだ。
私は、アメリカの作家マイク・ハーナッキーの『成功の扉』という本で、そんなことがあった。
なかなか良い話で、簡単に書くとこんなものだった。
ある成功した投機家(投資家と投機家の区別は曖昧だが)が講演を行っていて、投機家は自分が行った投機について説明していた。
すると、受講者の1人が立ち上がって言う。
「その投機は非常に危険ではないですか?」
それに対し、投機家が、
「はい。私は進んでリスクを背負う覚悟がありました」
と答えると、その受講者は、
「私には真似出来そうにありません」
と言う。
その後の投機家の言葉が良かった。それは、
「それが、私が講演し、あなたが受講料を払っている理由ではないですか?」
だ。
本の著者のマイク・ハーナッキーも、この講演を聞き、この言葉をよく憶えていたのだった。
この本の著者と、読者2人が、同じ言葉に感動していたわけである。
著者は、もう一例、似た話を取り上げていた。
著者が弁護士をやっていた時のことだった。
仲間の2人の弁護士達が会話をしていたのだが、1人の弁護士が、環境の良いフロリダに引っ越すと言う。
もう1人の弁護士は羨ましがったが、そこから引っ越すということは、今の安定した職場を捨て、1から始めないといけないということで、とてもリスキーだった。
しかし、引っ越すつもりの弁護士は、「分かっているよ。でも引っ越すんだ」と言う。
すると、もう1人の弁護士は、「お前は大馬鹿者だ」と怒鳴って出て行き、残された弁護士は肩をすくめた。

まあ、簡単に言えば、成功するためにはリスクを背負う覚悟が必要ということだろう。
この本について話していた我々2人は、こんな言葉を共通して知っていた。
「夜空の星を掴み取ろうとするのは危険なことだ。しかし、それをしないと、もっと愚かな危険がある。それは、もしかしたらなれたかもしれない偉大に人間になり損ねる危険だ」
格好良い言葉で、若かった我々2人は、その言葉にシビれていたのかもしれない。
しかし、時が流れ、初音ミクさんの会社クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之さんの、こんなインタビュー記事を見た。
伊藤さんの地元、北海道から、ミュージシャンを志して東京に行った若者達がいたが、皆、30歳くらいで諦めて帰ってきた。だが、その歳ではやり直しが効かない。人生をかけるものじゃない。
・・・だいたい、こんな話だった。
では、上の投機家やフロリダに引っ越す弁護士は、投機や引っ越しに人生をかけていたかというと、我々(ハーナッキーの本について会話していた私と知人)は、そう「勘違いしていた」のだ。多くの読者もそうだったに違いない。
この投機家と弁護士は、確かに、リスクを背負う覚悟はあったが、「デッド・オア・アライブ(死か生か)」といった大博打をする意気込みだったわけでもないのだ。
だが、決心をしたのだ。
ここらは、微妙な言い方になってしまうが、この投機家と弁護士は、「軽い決意をした」のである。
ところが、普通の人は、この「軽い決意」をしないのだと私は気付いた。
普通の人は、世間や周囲に流されてしまい、自分の意思でハンドルを(皆と違う方向に)切らないのである。
クリプトンの伊藤社長は、ハンドルを切ったから、初音ミクさんを生み出したのだと私は思ったのだ。
ただ、そんなに極端にハンドルを切ってはいけないのだ。
伊藤社長マニアである私は、伊藤社長とクオンの武田社長との対談が載ったクオンの社内報(立派なものだった)を取り寄せたり、いろいろ調べたもので、私の著書『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)を見ても、それが分かるかもしれない。
決意、決心については、足立育朗さんの『波動の法則』と、その続刊、あるいは、画家であった足立さんの妹さんの『あるがままに生きる』が参考になった。
『波動の法則』は、PHP版は(現在はナチュラルスピリット刊)20年以上も前に出たが、最近もベストセラーになっているようだ。ついに、この本の時代なのだと思う。

マイク・ハーナッキーのその本はベストセラーになったらしいが、あの本のおかげで破産した人もいるかもしれない。
しかし、それは、おそらく多くはない。
だが、あの本で成功した人も少ないに違いないし、それは、ハーナッキーのその後の本によって知ることが出来た。
結局、普通の人は決意しないのである。
チャップリンは、人生に必要なものは、「勇気、想像力、少しのお金」と言ったらしいが、こう言い直すべきだ。
「少しの勇気、そこそこの想像力、必要なお金」








  
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