フランスのエミール・クーエ(1857~1926)の自己暗示法は、現在にいたるまで、多くの著名な自己啓発の指導者達に活用されている。
クーエ自身は、正式に心理学や医学を修めた訳ではないらしいが、彼の診療所では、数多くの難病を奇跡のように、そして、多くは短時間で治した。
例えば、脚の障害で、自分で歩くことが出来ずに担ぎ込まれた者が、十分後には元気に走り回っていたという。
治療法は暗示だけである。
ところが、不思議なことに、言葉が分からない赤ん坊であっても、赤ん坊を抱く人が自己暗示を行うことで癒すことが出来たという。

クーエの自己暗示の言葉は、クーエ自身が作ったフランス語のものと、クーエが監修した英語のものがある。
日本語の訳としては、

毎日、あらゆる面で、私はますますよくなってゆく。
『自己暗示』(G.H.ブルックス/E.クーエ著、河野徹訳。法政大学出版局)

私は毎日あらゆる面でますますよくなってゆく。
『暗示で心と体を癒しなさい!』(エミール・クーエ著、林陽訳。かんき出版)

である。
ところで、上記のように「あらゆる」ことを対象にする自己暗示を、「一般暗示」と言う。
一方、脚が痛い時に、「脚の痛みが消える」とか、ダイエットしたい時に、「私は痩せる」といったように、個々のことを対象にする自己暗示を「特殊暗示」と言う。
特殊暗示は、一般暗示の中に含まれ、また、効果としても、一般暗示の方が高いことが確認されているようだ。
だから、実際のところ、特殊暗示は必要ではなく、一般暗示のみで良い。
また、自己暗示に対し、催眠術師によって暗示をかけてもらうような「他者暗示」もあるが、他者暗示といったところで、それを自己暗示として受け入れた時のみ有効なのであり、つまるところ、必要なのは、一般暗示である自己暗示である。

ところで、自分の必要なものは自分が一番知っているように思っているが、実は、そうではない場合が多い。
つまり、自分が本当は何を望んでいるのかが分からないのだ。
だが、全意識の5パーセントに過ぎないと言われる顕在意識には分からなくても、はるかに広大な潜在意識には分かっている。
一般暗示で「あらゆる面」と言った時、自分では気付かない必要や願いも、ちゃんと対象になるのである。
イエスが「神はあなたの必要なものをよく知っている」と言ったようなものである。

クーエは、自己暗示の言葉はリズムが大事だと考え、苦労して作ったようだ。
しかし、上記の日本語訳はどうかというと、あくまで主観だが、あまりリズムがあるとは思えない。
また、これもあくまで私にとってはだが、まず、これらの言葉は長過ぎると思う。
そこで私としては、いつもご紹介する、「神様の奇跡が起こる」と唱える方を選ぶのである。
(「神様の奇跡が起こる」は、教育学者、七田眞氏の『奇跡の超「右脳」開運法』にある、ホームレスの男が奇跡を起こした言葉)
これも偉大な一般暗示であると思う。
それでも長いと思う時は、ジョセフ・マーフィーの「単語法」と呼ばれる、「成功」とか「勝利」という言葉を唱えるだけでも良い。
こちらの方が好みに合い、楽しくやれる人も多いだろう。
また、これは一見、特殊暗示に属すると思われるが、「富」という言葉は、実際のところ、経済面だけでなく、健康、友愛などの面での豊かさを示唆するのではないかと思う。
それに、お金が全てではないが、多くの人間の第一の悩みはお金であると思う。
だから、「富」という言葉の単語法を好ましく思う人も多いと思われ、そんな人は「富」と唱えれば良い。
効果は、ジョセフ・マーフィーも保証している。

幸福になる方法が分からないなら、クーエの自己暗示を行うか、「神様の奇跡が起こる」、あるいは、「成功」「勝利」「富」などの言葉を唱えることをすぐに始めるのが良いと思う。
クーエは、夜、床についてからと、朝、目覚めた時に、20回ほど唱えることを薦めている。
ジョセフ・マーフィーは、単語法を、やはり、眠りながら唱えることも薦めているが、日中も定期的に、あるいは、いつでも唱えることも薦めている。
「神様の奇跡が起こる」で奇跡を起こしたホームレスは、1日中、1週間か2週間唱えることで奇跡が起こった。
私は、法然が念仏を、「常に」唱えるよう教えたように、常に唱えるのが良いと思う。
なぜなら、我々は、幼い頃から、マイナスの暗示を叩きこまれ、さらに、テレビ、新聞などのメディアからもマイナスの暗示になる言葉を、長年、浴びせられ続けている。
そして、頭の良い権力者達によって、我々に奴隷精神を叩き込むために、意図的に我々に聞かせたり見させたりするマイナスの言葉も多いに違いないのだ。
それに打ち勝ち、自分が本来持っている驚異の力を解放するためには、法然の念仏のように、「生活しながら唱える」のではなく「唱えながら生活する」ほどでなくてはならないと思う。
私に関して言えば、自己暗示やアファーメーションだけが仕事なのであり、それ以外は自動的に行われることであると見なしている。








  
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