悟りを開いたり、死んだら、個性が消える、つまり、個別性がなくなるという話がある。
まあ、誰もが悟りの方は縁遠いと感じているだろうが、死と同じことだ。
しかし、それ(個性が消えること)を嫌だと思う人が多いと思う。
悟りを開いてもナンシーの夫でありたいし、ジョンのママでありたい。
死んだら、トムやメアリーや太郎として、天国で皆と面白おかしくやりたいし、極楽浄土の素晴らしさ楽しさを味わいたいと思っていることだろう。
それに、花子やマークである自分が消えるのが怖いと思っている。

これらについて、分かったようなことを言う者は・・・いや、実際分かっているのかもしれないが・・・もっと上手く説明しろよと言いたいと思っていたが、最近は、「もっとうまく説明してもいいんじゃないかなあ」というくらいに思えてきたし、さらに、「死ねば個人としてのお前は消えるのじゃあ、わーはっは」でも別に良いのかなあと寛容になってきた。
なぜなら、どこにも悲惨がないからだが、そう言うと、「どう悲惨がないのじゃ?!」と聞かれるかもしれない。

たとえて言えば、死んでも慶子でなきゃ嫌だというのは、大学生になったらセーラー服が着れなくなって嫌だというようなもので、着たけりゃ、勝手に着ればいい。
「そんなことしたら笑われる」と言うなら、笑われるようにすれば良い・・・と、ここでちょっと聞き慣れないことを言われた気がすると思う。
つまり、笑われるも、笑われないも、どっちでも出来るし、どっちも同じなのだ。

アラン・ワッツが『タブーの書』(改定版は『ラットレースから抜け出す法』らしい)で、こんなふうに喩えている。
退屈してたので、1人で家族ごっこと始め、お父さん役とお母さん役の2役をやっていた。
そのうちに、子供も出来、息子役、娘役を含め、1人で4役をやっていた。
ところが、遊びに夢中になって、お父さんを演じる時はお父さんになり切ってしまい、娘を演じる時は娘に同化してしまい、自分は単に遊びをやっているということを忘れてしまった。それが人類の状態なのだと。
その喩えで全く問題ない。
そのうちの誰かが死んだということにしたら、残った者達が悲しくて仕方がなく、どうしていいか分からなくなった。
で、どうしたらいいかというと、どうもしなくていい。
死んだ人がどこに行ったのかと真剣に考えるが、どこにも行ってないし、最初からいなかった。
それなのに、たとえば、お父さん役が、「私は死んでも妻の夫でありたい。息子や娘のパパでありたい」と演じている(正しくは、演じさせているのだが)。
それじゃあ、死んだら幽霊役しかないじゃないか?

つまり、死んだら、パパを演じていた遊び人に戻る、あるいは、同化するだけのことだし、パパだったことは、どうでも良いことなのだ。
あなたが、社長だろうが、人気アイドルだろうが、誉れ高い一流大学の秀才だろうが、乞食だろうが、同じことだ。
演じている者の能力が、演じられている者の能力と比較のしようもないほど高いだけで、話は同じなのだ。
「いや、私は社長として、従業員の家族の生活を保証する義務がある」なんて立派なことを考える役をするのも、楽しいことかもしれないねえ。
「じゃあ、やーめた」なんて言って、世間から非難轟々される役に替えるのも面白いかもしれない。
「じゃ、じゃあ、あの人気アイドルとラブホに行く役ってのは・・・」なんて役を演じさせる者は、せいぜい、その後、アイドルの握手会で変なことをして逮捕される役を用意するものなのだ。その方が面白いしね(笑)。

確かに、プレイヤー・・・まあ、神様みたいなものなのだが・・・は能力が凄いので、我々が自力行動が出来るように作ってあり、それを自我と言うのだが、やっぱり自分が演じていることに違いはない。
昔のテレビ時代劇で、丹波哲郎さんが、日本一の剣士の役をしていた。
その剣士の名を騙る者が現れ、そいつは、講演会を開いたり、グッズ販売で儲けていた。
ある時、その偽剣士が、丹波さん演じる本物の日本一の剣士と同じ宿に泊まっていたが、偽物は、その剣士の名声を利用して可愛い姫様を口説き、一緒に温泉に入るという羨ましい・・・もとい!不埒なことをしていた(笑)。
日本一の剣士の門弟達が、「あの者、こらしめてやりましょうか?」と言うと、日本一の剣士は「捨ておけ」と応える。
日本一の剣士は考える。
「俺だって、本当は、あんなことがしたいのだ。あいつは俺の代わりにやってくれているのだ。あいつは俺だ」
さすが日本一の剣士・・・の役をしている神様、少しは分かっている役だ。
しかし、どこか不満げなのは、完全には分かっていない設定だからである。
「あいつは俺」
そうだ、どちらも神様が演じているのだから、いつでも替われるのだ。
ルンペンから世界一の作家に役柄を変えたコリン・ウィルソンのようにね。








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