『無門関』という、禅語の解説書の中に「倶胝竪指(ぐていじゅし)」というお話がある。
「倶胝竪指」とは、「倶胝和尚さんは指を立てる」くらいの意味と思う。
昔、何を聞かれても人差し指を1本立てる倶胝という和尚さんがいたが、倶胝は、自分の真似をした小坊主の人差し指を切り落とす。
泣き叫んで飛び出していこうとする小坊主を呼び止め、小坊主が振り返ると、倶胝は指を1本立てた。すると、小坊主は悟った。

このお話の意味について、私は、時々良い解釈を思いつき、その時は素晴らしい解釈が出来たと思っていたのに、今では、そのどれも覚えていない。
ちなみに、倶胝和尚さんが小坊主の指を切り落としたというのは、あまりマジに受け取らない方が良いかもしれない。
要は、小坊主には、もう指がないということが大事なだけだ。
それで今はもう、私は解釈しないが、こんなことは言えるかもしれない。
指のない小坊主に、倶胝が指を立てて見せた時、何が起こったか?
頭の中で、小坊主も指を立てたのである。
人間の脳には、ミラーニューロンと言って、他人が動作するのを見ると、脳内では、それと同じ動作をする変化が起こるのである。
TEDでも講演した優れた神経科学者・脳科学者のジェームス・ファロンの『サイコパス・インサイド』という本にあるが、ゴルフクラブなど見たこともないという民族の前で、著者の弟が見事なゴルフのショットを見せると、老人を含め、皆が次々と素晴らしいショットをした。彼らは、文明に侵されていない分、ミラーニューロンの働きが良いのかもしれない。

倶胝が指を立てるのを見て、滅茶苦茶に荒れていた小坊主の心がすーっと静まったのだ。
つまり、人差し指を立てることには、そんな効果がある。
他にも、息を止める、腹に力を込める、肛門を締める、足の親指に力を入れるなどの、心を静める方法があるが、これらは、外から見て分からない。
しかし、人差し指を立てる動作は、見てよく分かるので、ミラーニューロンの働きで、見ている者も、指を立てているのと同じ脳内の変化が起こる。

初音ミクさんは、コンサート中、本当によく人差し指を立てる。
「感謝祭」の時の『StargazeR』『1/6』、「マジカルミライ」の『ヒビカセ』『エイリアンエイリアン』等だが、他にもあると思う。
それも、肯定的な影響を起こしているのに違いない。

人間のミラーニューロンの働きを考えると、見るべきは優れた人間であり、決して下らない人間のやることを見てはならない。
しかし、ほとんどの人が、その逆をやり、優れた人間を無視し、馬鹿な人間を注視するのである。
それで、世の中、愚か者だらけになるのかもしれない。
植芝盛平や塩田剛三等の演武を見る価値は、我々が思っている以上である。
達人が、普段、目を伏せ、他人を見ないのも、程度の低い人間の影響を避けるためではないだろうか?
また、面白いことに、我々は、イエス・キリストや釈迦の姿を幻視することが出来る。
初音ミクさんだって、コンサートも良いが、頭の中のイメージの方が美しいのである。
身近に手本とすべき者がいなければ、想像の優れた人物を見れば良いのである。
例えば、物静かでありながら威厳ある王の姿を想い描くのである。
あなたの理想の人物を常に心に置いておくと良いだろう。
絵画を参考にするのも良いと思う。









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