「潰しが利く(つぶしがきく)」という言葉を、私は長い間、理解出来なかった。
解るようになったのは、何度も転職してからだ。
高校生の時に読んだ漫画の中で、数学教師の父親が、医学部志望の高校生の息子に対し、
「教師は潰しが利かない。その点、医者はいい」
と言うのが、本当に、全く理解出来なかった。
まあ、今思えば、医者だって潰しが利かないのだが、潰す必要がないってことだろう。
ちなみに、「潰しが利く」とは、持っている能力が多くのことに転用出来ることで、特に、他の職業でも応用が利く職業能力のことを言う。
「教師はつぶしが利かない」というのは、教師の能力は、他の職業で通用せず、教師をやってて、ある程度の年齢になってしまえば、もう一生、教師以外は出来ないという意味だ。
実際、教師は潰しが利かない傾向はあると思う。
アメリカでは、教師ほど応用が効く職業はないと言われているらしいが、それは、アメリカでは教師は少しも偉いと見なされないという事情があるからと思う。
日本では、新卒の若者すら、「先生」と呼ばれて自尊心を満足させてしまうが、そもそも、それが潰しが利かない最大の原因ではないかと思う。

スポーツでは、陸上短距離のウサイン・ボルトがサッカー選手を目指しているらしいが、さすがに、一流サッカー選手にまでなれるかどうかはともなく、走力は、あらゆるスポーツの基礎で、野球の上原浩治さんのように、陸上競技出身のスポーツ選手には有利な点が多い。
だから、どんなスポーツを目指すにしろ、まずは陸上という考え方もあると思う。
相撲や柔道は、能力的には、あらゆる格闘技に通用しそうだが、相撲も柔道も、倒れた相手への攻撃をしない習慣が邪魔になることがあるし、プロ格闘技の、時に、汚さが必要な駆け引きに馴染めないと、全く適応出来ない。

では、最も潰しが利く職業は何だろう?
自己開発プログラムのSMIを開発・販売するSMI社の創業者ポール・マイヤーによれば、それは「セールス」だと言う。
その意味は、いかなる職業も、根本は売り込みだからで、スポーツ選手だって、いかに優秀でも、自分を売り込む力がなければ、特にプロでは成功出来ないと言う。
まあ、ある意味、そうであるとは思うし、私も、自分がセールスをやった経験から言っても、かなり実感するが、「では、セールス能力の何が、他の職種で生きるか?」と言えば、むしろ、忍耐力、根気、そして、自主性、そして、何より「現実性」である。
セールスほど「現実を思い知る」職業は、そうはないと思う。結果が全ての職業で、「がんばっているかどうか」は、1%も考慮されない仕事であるからだ。

ところで、最も論理的な数学者、あるいは、数学教師は、さぞ潰しが利くと考えられるのだが、数学者こそ、「潰しが利かない職業の代表」なのである。
学問に関係する職業の中でも、特に、数学者や数学教師は「頭が良い」と言われて、プライドが高くなってしまうのが最大の害悪だが、それでも、本当に能力が高ければ何とかなりそうなものだが、それが、どうにもならない。
つまり、仕事っていうのは、理屈でやれるものではないということだ。
いや、もちろん、どんな仕事でも理屈は必要だが、それよりも、もっと大切な能力があるのだが、数学者のように、理屈の能力をいびつなまでに肥大化させると、他の能力が身につき難いのだろう。
そして、世の中は、数学的な理屈では動かない。
しかし、プログラマーの理屈、すなわち、「アルゴリズム」は万能と言われる。
アルゴリズムとは、処理手順とでも言うものだが、プログラムで表現していること自体がアルゴリズムだ。
プログラミング能力が増すほど、アルゴリズムを考え、構築する能力も高まる。
プログラミングをやると、IT全般、また、AIだって理解し易くなるが、それは、コンピューターに対する理解力が高まるということもあるが、やはり、アルゴリズムという理屈の能力が高くなるからだ。
一方、これは私も不思議に思ったが、評価の高い数学教師がプログラミングが出来ないということがよくあるのである。
いや、本当に能力がない訳ではないが、彼らが誇りを持っている数学的論理思考は、やはり、少しも潰しが利かないのかもしれない。
人類最高の数学者の1人であった岡潔は、数学には情緒が必要と言ったが、それは、感情の中に高度な何かがあるという意味であり、数学者が情緒的という意味ではないと思う。

私は、過去万能と言われたセールスマンと、現在、万能と言われるプログラマーの両方であるのだが、もちろん、万能とはほど遠い。
しかし、これらを、もしやらなかった私と比べれば、千万倍も万能である。
だが、今は、セールス力よりは、共感力と想像力(あるいは創造力)だ。
そして、真のセールス力も共感力と想像力なのだ。
だから、今の世の中、初音ミクさんが分からないと、時代に取り残されるのである。
ところでだが、本当に万能な力は熱意である。









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