昔、ある超一流セールスマンの本で読んだ、こんな話をよく覚えている。
アメリカだったと思うが、そのセールスマン氏が滞在していた場所で、素晴らしいショーが行われることが分かり、セールスマン氏は、一緒にいた友人に、「出来れば見たいものだね」と言った。
そのショーは、テーブル席で見る高級なもので、誰でも予約出来る訳ではなく、それなりの地位の人物専用であるようだった。
しかし、友人は、「では行こう」と言う。
セールスマン氏は戸惑ったが、何かを感じて、友人に従うことにした。
高級クラブに到着すると、友人は守衛に愛想よく手を振って、門を入る。
セールスマン氏は友人に、
「ここは君の馴染みのクラブなんだね?」
と尋ねると、友人は、
「いや、初めて来た」
と言う。
高級なカーペットが敷かれた廊下を友人は颯爽と進み、地位の高い従業員らしい人物に出会うと、
「ショーの会場はどこだね?」
と堂々と尋ね、案内をさせる。
会場に着くと、客を迎えるマネージャーらしき者を見つけて悠然と近付き、
「マネージャー?」
「イエス」
「テーブルツー」
と命じる。
一瞬戸惑ったマネージャーだが、すぐさま部下を呼び寄せて、
「テーブルツー」
と命じ、命じられた部下は従業員に、
「テーブルツー」
と命じ、命じられた従業員は、すぐさま、2人がかりで、どこかからかテーブルを運んできて、テーブルクロスをひき、椅子をセットした。
そして、2人はブランデーを飲みながら、快適にショーを楽しんだのだった。

これに近い話は、ジョン・マクドナルドという人物が書いたとされる『マスターの教え』という本にもある。
マスターと呼ばれる人物が喫茶店に入ると、従業員は彼を非常に丁重に扱い、店を出る時、マスターは請求書にイニシャルだけをサインしたが、実は、マスターがその店に来たのは初めてだった。
マスターは、「正しい態度でいれば全て思い通りになるということを君に見せたかっただけだ」と言う。
あるいは、フレデリック・ヴァン・レンスラー・ダイの『マジックストーリー』(『人生を変える魔法の物語』と題された同じ本の電子図書もある)では、昨日までロクデナシだった男が、そんなことをやってみせる場面がある。

セールスマン氏の話を読んだ数年後に私は中国でこんな経験をした。
散策をしていたら、どこか知らないが、普通の処ではない、立派な作りの場所に入り込んだ。
歩いていると、なんと、銃を抱えた番人がいる。
どうも、入ってはいけない、拙い場所に来てしまったようだ。
そういえば、ここらは、そんな場所があるから気をつけるよう、商社の人に言われていたような気もする。
しかし、セールスマン氏の話を覚えていた私は、そのまま真っ直ぐ歩き、番人に悠然と近付くと、漫然とした笑顔で「ニイハオ」と言うと、番人は直立不動になって慇懃な笑顔で挨拶を返してきた。
私は、なんとか出口を見つけて出ていった(笑)。
後で商社の人にそう言ったら、「危ないことしますね」と呆れられた。
ちなみに私はその時、20代前半だった。

もちろん、未熟な人間が、狙ってそんなことをすべきではない。
だが、必要な時は、しかるべき態度が必要だ。
そして、しかるべき態度をする時は、ほぼ呼吸をしないことだ。
そのためには、普段から、微かな呼吸をするよう心掛けることである。







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