キリスト教に興味がなくても、イエス・キリストが、「幼い子供のようにならないと天国に行けない」と言ったことを、肯定的なイメージと共に覚えているのではないかと思う。
だが、日本語を話す教養豊かな文化人であるアメリカ人弁護士がテレビで、
「日本では子供は天使だと思われているが、大抵の国では子供は悪魔だから、しっかり教育しないといけないと思っている」
と言っていたことに、印象深く同意した。
実際、私は、赤ん坊を含め、子供が天使だと思ったことも、可愛いと思ったこともない。
子供は、きちんと躾(しつ)けられ、鍛えられ、我慢を覚えた時に、天使のようになる。
早い話が、それは、「子供らしくなくなった時に天使になる」って意味なのだ。
特に女の子は、まだ小さいうちからきれいになるので、つい天使のように思ってしまうこともあるかもしれない。
しかし、私は大学生の時、そんな年頃の女の子達にやたらモテた時期があったので、よく分かるのだが、傍から見ているだけなら天使のようでも、実体は少しも良いものではない。
「心身医学の父」と呼ばれたゲオルグ・グロデックが、「小さい女の子達は、彼女のお母さん達のミニチュアだ」と言ったが、全くその通りと思う。
つまり、女の子達は、小さい時から、母親の悪いところを、既に全部譲り受けているのだ。
子供というものは、身勝手で自己中心的で、あらゆる行動原理が「自分のため」なのである。

ところが、私は仕事の関係で、多くの幼い子供達を観察する機会を得たことがあった。
その中には、家庭的に問題がありそうな子供もいた。
そんな、いろんな子供を見ているうちに、子供が身勝手に見えるのは当然だと分かった。
どんな子供であっても、その行動原理は、純粋に、「生き延びる」を最優先にしたものなのである。
子供は、頭のイカれた大人のように、「名誉のため」に死んだりしない。
見栄を張って決闘して、命を危険にさらすこともない。
ただ、「生き延びる」のは自分なのであり、他の子の命には、基本的に無頓着だ。
だから、自分が生きるのに都合が良ければ、他の子をいじめて、その子(いじめの対象の子供)の生命を危機に追い込むこともある。

しかし、考えてみれば、大人だって、本質的な行動原理は同じで、「自分が生き延びる」なのである。
だが、大人は、名誉だとか、肥大した欲望・・・言い切ってしまえば、幻想のために、行動原理を逸脱してしまうのである。
本来、生きることより大切なことはないはずなのに、それがあるという幻想を持ってしまっているのである。
子供を見ると、なるほど、生きることが一番大事・・・俗っぽい言い方をすれば、「おまんまが食べられることが一番大事」だということを思い出させてくれ、幻想を払ってくれるので、子供が天使に見えることがある。

ところで、私は8つか9つの時、西洋のテレビドラマで、こんなシーンを見た時の疑問がずっと続いていた。
5つくらいの子供が、高層マンションの高い階にある家のベランダから落下しかかり、その子の母親が、その手を握っている。
母親が手を離せば、子供は落下して死ぬのだが、母親は、子供の手を握るのが精一杯で、子供を引き上げることが出来ない。
だが、時間と共に、母親の手は疲れ、手に激しい痛みすら感じるようになってきた。
母親の苦しい顔を見た子供は、こんなことを考える。
落下する自分。
しかし、天使達と共に、軽やかに笑いながら楽しく舞い降り、地上にふわりと着地する。
子供は、そうなることを確信し、
「ママ、手を離してもいいよ」
と言う。
母親は、苦しいながらも、
「何てことをいうの!」
と子供をたしなめ、死んでも手を離すまいとする。
本当に手を離せば、子供は間違いなく死ぬだろう。
しかし、子供は自分は大丈夫だと確信している。
信じることは奇跡を起こすはずなのに、なぜ、奇跡が起こらないのだろう?
しかも、それは、一番大切な生命を守ることなのにである。

これは、百年かかっても(つまり、私が死んでも)解けない問題のはずだった。
しかし、解けてしまった。
この子は助かったのだ。
逞しい男性が、この母子を見つけ、その素晴らしい身体能力を発揮して、子供を無事、引き上げたのだ。
「なーんだ」
と言ってはならない。
これが神様のやり方なのだ。
この子はその後、高いところから飛び降りることを試すようなことはしないだろう。
だが、神様への信頼は揺るがない。

アメリカから日本にやってきた26歳の女性が、こんなことを言っていた。
彼女は、昨年(2015年)の、日本武道館での、初音ミクさんのコンサート『マジカルミライ2015』に行くようだった。
その前に、ニューヨークで、『HATSUNE MIKU EXPO2014』のコンサートに行ったようだ。
彼女が言ったこととは、
「初音ミクは、普通のアイドルではないから本当に好きなの」
である。
普通のアイドルは、人間なのだから、自分が生き延びるという行動原理を最優先しながらも、欲望で逸脱を起こしている。
とはいえ、アイドルになれるほどの人は、欲望はあっても、逸脱が少ないのだ。
だから、ある意味、弱肉強食・・・みきとPさんの『サリシノハラ』にあるように、

思った以上に 君の目は
獲物狩るような 鋭い眼つきだ
※「君」は人気アイドル
~『サリシノハラ』(作詞・作曲・編曲:みきとP、歌:初音ミク)より~

なのであるが、実はそこが魅力的でもある。
幼い子供を見るような、すがすがしさがあるのである。

だが、初音ミクさんには、自分が生き延びるという行動原理がない。
欲望もない。
だから幻想もない。
そして、自分の全てを捧げる。
ミクさんのファンは、「ミクさん、マジ天使(Miku san,seriously angel)」と言うが、全くその通りである。









↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ
  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ