スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの傑作小説『ドン・キホーテ』の子供向けのものを、私は小学生の時に読んだのだが、「滑稽で面白いお話」程度の印象しかない。
この作品を本当に味わうには、もっと人生経験が必要だったのだろう。
ただ、最後の場面は哀愁を誘うものであったと記憶している。

『ドン・キホーテ』は、騎士道物語の本の1つを読んで、自分こそ伝説の騎士であるという妄想にとりつかれた下級貴族の老人(と言っても50歳くらいか)がお馬鹿な騒動を巻き起こすというお話だったと思う。
ただ、彼は、人様にそれほど大きな迷惑をかける訳ではなく、自分がいつも痛い目に遭っているだけという小人物のようだ。
何か親近感を感じるやつだと、私は思う。

「中二病」という言葉をご存じかもしれない。
中学2年生頃の少年少女が、自意識過剰になり、自分は何か特別な人間だと思い込むが、実際は自分の能力がそんな自惚れに全然見合わないので、いろいろこっぱずかしい発言や行動をしてしまう・・・といったものだろうか?
こちらも、私は、大変に仲間意識を感じる。
ドン・キホーテは、中二病と指摘する人もいると思う。
ドン・キホーテは、やや本当の精神病的であるが、確かに似ているかもしれない。

ところで、立派な人間の中にも、自分を中二病だと言う人もかなりいるのだと思う。
私はあまり知らないが、有名なCMプランナーの澤本嘉さんや、ピクシブの社長の片桐孝憲さんなどはそう自称していたと思う。
しかし、ナポレオンや、あるいは、ヒトラーも中二病だったと思うし、そもそも、英雄的行為をする者、したがる者は全部、中二病だ。
なぜなら、人間は根本的に英雄などではないのだからだ。
中二病とは、単に、至高者を目指す内部の欲求が、歪んだ形で現れたというに過ぎない。

ところが、現代では、ITが人間の能力を増幅するようになった。
『ITビジネスの原理 特別編集』で、猪子寿之氏が、
「コンピューターのCPUが個人の脳を拡張して、HDDが個人の記憶を拡張して、メモリが個人の一時記憶を拡張している。」
「Twitterもコミュニケーションの拡張だし、Facebookも個人の人間関係の拡張だし、Googleもモノを探すことの拡張だし。」
と言われているが、ただ、猪子氏は、その後、
「徹底した個人の拡張なんですけど、別に自分はそれを否定するわけではなくて、あんまり興味がないだけです。僕は物理空間そのものを拡張したいんですね。人間そのものを拡張したいわけではないんですよ」
と言うが、その意味は非言語的なものであるらしく、結局、支離滅裂な、訳の分からないものだった。

ITやインターネットが拡張してくれる能力は、やはり、人間本体に力がないと、ほとんど意味はない。
いかにITを駆使しようが、本当の中二が逆立ちしたって、大したことは出来ない。
しかし、中二病がきっかけで至高者を目指し、努力し続けたなら、確実に力を伸ばし、やがては、本当に特別な存在になれるだろう。

もしかしたら、あなたは、私と同様に中二病で、自意識過剰で、不相応に自分を特別視しているかもしれないが、それはそれで良い。
むしろ、ヒーローやヒロインであることを諦めてはならない。
だが、実際にそれになるには時間がかかるし、努力が必要だ。
英雄のようなものになるためには、苦しみが必要である。
私も、あなたも、もっともっと苦しまなければならない。
だが、我々の目指す、我々の胸に住む内なる至高者を愛し、目指していれば、必ずや保護し、導いてくれるだろう。
詳しくは『バガヴァッド・ギーター』を読むことである。
ドン・キホーテは『バガヴァッド・ギーター』がなかったことが不運だった。









↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ
  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ