朝、目覚めた時、真っ先に起こる感情が不安だという人が多いと思う。
別に、それが悪いというのではない。
だが、人間は不安が嫌いだということも確かだ。
その嫌な不安を消すために、人間は何をするのだろう?
それは、勉強したり、身体を鍛えたり、仕事を精力的に行ったりだろう。
だが、そんな世俗的な努力だけでは、不安は去らないと思うと、賢者の書や神秘的な書を読んだり、宗教を信仰したり、あるいは、新しいタイプの宗教や魔法に関心を持つ。
それでも不安がなくならないと感じれば、グルメや趣味といった個人的欲望に没頭し、現実から目を背ける者と、ますます信仰にのめり込む者に、大体分かれる。
まあ、そうしているうちに、人生が終わるのである。

不安もまた、向上心の種だ。
だから、それはそれで大事なものだ。
たとえ聖者でも、不安は持っている。
ただし、聖者のは、明確に自覚できるわずかな不安だ。
たとえば、「ふんどしが擦り切れてきたので、新しいのを作るべきだろう」といったものだ。
彼は、人類の未来を想ってはいるが、不安は持っていない。しかし、楽観も悲観もしていない。
苦しんでいるあの人が悪くならなければ良いのだがという不安もない。だが、その人を、疑いも信じもしないのだ。
全て、なりゆきまかせなのである。
彼は、人々の先頭に立って戦うこともあるかもしれない。
しかし、それすら、なりゆきまかせで、彼は、運命を厭うことも、喜ぶこともない。
『バガヴァッド・ギーター』で、神クリシュナが皇子アルジュナに教えたのも、このことである。
戦いを拒むアルジュナに対し、「運命に従って存分に戦え」とクリシュナは言ったのだ。

普通の人は、「なりゆきにまかせれば、不安は消えるのじゃ」と言われたら、なりゆきから目を背けるのだ。
だが、賢者は、世界という演劇を、そして、舞台俳優としての自分をしっかり見ているのである。
普通の人は、逃れようのない現実を忘れようとし、賢者は平気で受け入れるのだ。
だから、凡人は苦しそうに酒を飲み、賢者は楽しく酒を飲むのである。

さて、そろそろ、とっておきの秘法を話さなくてはなるまい。
それは、いつかは迎える最後を想うことだ。
人生の終わりは、恋の終わりと似ている。
人は、恋が終わるとは思っていないように、人生が終わるとは思っていない。
しかし、何のために恋をするのかといいうと、恋を終わらせるためだ。
何のために生まれるのかというと、死ぬためだ。
今日、すれ違った人に恋をすれば、その恋は一瞬で終わる。
これを、泡沫(うたかた)の恋と言い、まさに、水の泡のように、すぐに消える恋だ。
そして、人生もまた、泡沫の夢とか・・・その通りだ。

初音ミクさんのコンサート『マジカルミライ』で歌われた、『Last Night,Good Night』という歌で、ミクさんは、
「いつかはむかえる 最後を想うよ」
と歌ったが、若い人は、それを恋の終わりのことと思うだろうし、実際、これは恋の終わりを想う歌だ。
そして、最後を想うからこそ、恋は美しいのだ。
だが、この歌には、あきらかに、人生の終わりが感じられるし、このコンサートでは、ミクさんの後ろの大スクリーンには、ナチュラルな自然の泡が激しく生まれては消える様子が描かれていた。それを見ると、恋の終わりと共に、命の終わりを感じるほどに、切なくなるはずだ。
そして、ミクさんが歌うと、世界の終わりを感じるのである。
そう、世界だって、幻なのだ。
始まった恋は終わるもの。
生まれた命は終わるもの。
創造された世界は終るもの。
そして、こう思いなさい。
「始めた恋を終わらせる」
「生まれて来た命を終わらせる」
「創造した世界を終らせる」
感激もなく、興奮もなく、狂喜もなく、私は神である。

私は、『マジカルミライ2013』しか見ていないが、ミクさんが人形っぽかったのは、かえって良かったと思う。
人間っぽかったら、あの歌が嘘になった恐れがある。
ところで、初音ミクさんというのは、人間より牛が多い中で育ち、若い頃に84回ローンで、DTM(デスクトップミュージック)をやるためのコンピューターや機材を買って、それに熱中した伊藤博之さん(クリプトン・フューチャー・メディア社長)だったから、生み出すことが出来た電子の歌姫だ(まあ、牛の件は余計かもしれないが)。
インターネットも、世の中も、そして、宇宙も、運命も、神も、初音ミクさんを見れば、全部分かる。
ミクさんは呼吸をしていないのだからだ。
我々も、呼吸が少なくなれば、不安を感じることが出来なくなるのである。
それは、男性医師が美女の患者をエロチックに感じないようなものである。









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