幼い少女の前に、美しい天使が現れ、喜んだ少女は、少し離れたところにいる母親に、「お母さん!」と呼びかける。
母親は別のことに気をとられていて、「なあに、ミカちゃん」と生返事をする。
少女は、天使が行ってしまう予感がしたので、慌てて、「お母さん、早く!」と叫ぶが、母親はなかなか応じない。
そして、もう一度、少女が、「お母さん!」と言った時、ようやく母親が少女の方を見るが、もう天使は消えていた。

天使の出現とは言わなくても、あなたも似たような経験があると思う。
とても面白いことが起こったり、テレビに面白いものが映っているので、近くにいる家族や友人を呼ぶが、呼ばれた方は反応が鈍く、なかなかこっちを見ない。
そして、見て欲しいものが終わってしまった後で、家族などが、「なんだい?」とこっちを見て、がっかりする。
その時、あなたは、「この馬鹿」と思ったかもしれない。
そうだ、彼(彼女)は馬鹿だ。
気配を感じることができないという馬鹿なのだ。
大抵の人は、幸運だって、そんな感じで逃してしまうのである。
天使がやってきても、スマートフォンでつまらないものを見て喜んでいるうちに天使は去り、その人に与えようとした幸運も持ち帰ってしまうのだ。
あるいは、悪魔が道の前で待ち構えているのに、よそ事に気をとられて、そのまま悪魔の罠に入り込み、汚れてしまうのである。

夜空の星を見て、あれは獅子だ、こっちはサソリだと思った人というのは、すごく気配の読める人だった。
その人は、星の配置を見て、物語すら心に浮かんだのだ。
たとえば、こんな感じだ。
「あの星の配置は、美しい乙女の姿だ。彼女は女神だ。人類が堕落した時、神々は地上を去ったが、彼女だけが地上に留まり、人々に正義を説いた。しかし、彼女も諦めて、あの場所に昇ったのだ。近くに天秤があるが、あれは、この女神の持ち物で、正邪を計るものだ」
こんな美しい物語が、心の深いところから現れる。それは神が語っているかのようだ。
この乙女は、正義の女神アストライアーで、乙女座の乙女とは彼女のことである。
星座のことを、英語でコンステレーションと言うが、星の配置から物語を思い浮かべるほどの者は、いつだって気配を敏感に感じる。
その人は、感性が鋭く、身の回りで起こっていることに関しても、それが偶然ではなく、意味のある必然であることを感じていた。
その人にとって、地上の出来事も、人の心の思いも全て、コンステレーション(星座)なのだ。
つまり、何かの大切な出来事を、星の配置から物語を捉えるように、その意味を感じるのだ。

世界の気配が読めるようになれば、神様に悪意はないってことが分かるだろう。
そして、世界はあなたの遊び場になる。
アインシュタインも「神は老獪だ。だが悪意はない」と鋭く感じていた。
人生の物語は、世界霊(アニマムンディ)と自分の心が関わり、共鳴することで生まれていく。
あなたの心も物語に関わるのだ。
初音ミクさんが、レディーガガのコンサートのオープニングで歌っていた『Story Rider』という歌が面白かった。
「君は、僕の物語の書き手(ストーリーライター)」だって言うけど、君が書くだけじゃなくて、君が僕と関わって、新しい物語を創りだして行くということなのだろう。
君は物語の書き手だけじゃなく、僕達は、軽やかな物語の乗り手でもあるのだ。
そんな生き方を会得すれば、宇宙は親愛に満ちた友になるだろう。

心理療法家の河合隼雄さんの、京都大学退官記念講義『コンステレーション』が凄い。ユング心理学の精髄だが、短くて、分かり易い。強くお奨めする。
下の一冊目の本『こころの最終講義』の第1章がそれだ。Kindke版もある。









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