いやな奴が消えるとほっとする。
しかし、それで後ろめたい気持ちになることがある。
私も、会社の中で、「苦手」なんてものではない、ほとんど憎んでいた者が、会社を辞めたことが(全ては憶えていないが何度か)あった。
事前に全く知らない中で、彼が、「今日で辞めます」と挨拶に来た時には、正直に言って、本当に嬉しかった。
独断的で傲慢な人間だと私は感じていたし、私よりずっと上の立場で、何かと私を攻撃してくるので、私はひどく煩わしく思っていたのだ。
だが、自分の嬉しいという想いに、後ろめたい気持ちもあった。辞めることになった事情は知らないが、彼の表情や雰囲気にどこか虚しさみたいなものを感じてもいたのだ。
普通に考えたって、いい年で、いい立場で辞めるのであるから、あまり結構な事情でないことくらいは分かる。

ところで、手塚治虫さんがまだいくらか若かった頃だとは思うが、彼が既に、日本一の漫画家と認められていたと思われる時の話だ。
福井英一さんという漫画家の人気が出てきて、彼は手塚さんの地位を追い抜いてしまう。
手塚さんは悔しくて、つい著作の中で、福井さんの作品を貶すようなことを書いてしまった。ところが、それを福井さん本人に気付かれてしまい、彼に問い詰められ、白(しら)を切ることもできなくなり、素直に謝ったという。
だが、福井さんは、過労のために急死してしまった。
手塚さんは、自伝的な著書の中で、その時のことを「ほっとした」と正直に告白されていた。なかなか言えることではないと思う。
ただ、手塚さんが、それをあえて書く気になったのは、福井さんが自宅に手塚さんの作品を全て揃えてあったことや、「俺は手塚を超えたとは思っていない」と言っていたことを、福井さんと親しかった人から知らされたこともあったのかもしれない。

あなたも、いやな奴の1人や2人はいると思う。
そんな時、どうすれば良いのかというと、手塚さんにすら言ってやりたかったほどだが、共にあるべき、共存すべきなのだ。
免疫学者の藤田紘一郎さんが昔、ある貧しい発展途上国に研究のため滞在した時のことだ。そこでは、排泄物を直接川に流していた(あるいは、川で排泄していた)のだが、住民は、その川の水で、食器など、あらゆるものを洗い、その水で料理もしていた。
子供達は、その中で遊んでいた。
想像するのも嫌な光景だが、不思議と病気の人はあまりおらず、清潔な日本と違い、アレルギーの子供なんて1人もいない。
調べてみると、確かに大腸菌はうようよいたが、特に病原菌が多いわけではない。
つまり、大腸菌と病原菌が共存し、お互い、相手を抑えているのである。
また、そこでは、人間が、大腸菌や病原菌と共存しているのだともいえる。
O157という大腸菌が猛威を振るった場所というのは、他の大腸菌がいない、清潔な場所だけだったらしい。
無菌状態になっていた学校の中で、特に惨事を引き起こしたのであるという。
少々不潔で、他の大腸菌がいれば、O157は本来弱い菌なので消えてしまうようだ。

いろいろ考えてみると、この世は、敵も味方も共存すべきだし、絶対的な敵や味方はいないのだろう。
CLAMPという人気のある漫画家ユニット(女性4人)が、昔(武内直子さんのセーラームーンの時代)、『魔法騎士レイアース』という作品を描き、アニメ化もされていたが、この漫画における主題は「この世に、絶対的な正義や悪などはない」ということだったらしい。

昔、SFテレビドラマ『Xファイル』を時々見ていたが、その中で、FBIの「Xファイル課」に身を置きつつ、時に、FBIに反逆するような行動をするモルダーに対し、FBI長官はモルダーを放置していた。
その理由について、FBI長官が言った一言が強烈に私の心に刻まれた。
それは、
「友は身近にいて欲しい。だが、敵はもっと身近に置くものだよ」
である。









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