ラルフ・ウォルドー・トラインの『In Tune with the Infinite』(無限者と調和して)は、1987年に出版され、世界的なベストセラーになり、現在も読み継がれている。
フォード自動車の創業者ヘンリー・フォードが、自分の成功はこの本のおかげと言い、この本をあらゆる人に薦めたという。
日本では、天才的な宗教家であった谷口雅春さんが荘厳な文語で翻訳し、2012年には口語訳の新訳も出ている。

確かに素晴らしい本であり、読むことは全面的にお薦めする。
ところで、この本の中で、著者トラインは、無限者、即ち、神と調和するためには、それに相応しい考え方が必要と主張している。
つまり、善意ある明るい考え方、楽天性、積極性、不屈の意思・・・といったもので、人間には、こういった思考を選ぶ力があるのだから、そうしなければならないということであり、そうであれば自分の世界を天国にするが、そうでなければ、地獄を創ってしまうと言うのである。
トラインの考え方とは、思考の性質が人生を決めるということだと言って良いだろう。
しかし、私は、そんな考え方は、かえって人々を不幸にしたと思う。

善意ある考え方ができるだずだと言われても、できない人がいる・・・いや、本当は誰にもできない。
私などは、年中悪いことや邪まなことばかり考えている。
善いことを考えるようになりたいと思わないでもないが、一生かかってもできそうもない。
そして、それで良いと言ったのが、法然や親鸞なのだ。
煩悩に満ちた我々凡夫は、善いことは何もできなし、善良な思考をすることも極めて難しく、常に、悪しき想いに囚われている。
だが、至高の仏である阿弥陀如来は、そのような凡夫を哀れに思い、そんな愚かな全ての人を救うために仏になったのだ。
大切なことはただ1つ。阿弥陀如来に全て任せ切ることだけだ。
その徴(しるし)が念仏なのであり、言い換えれば、念仏だけをすれば良いのである。
念仏以外の善を為そうなどと考えてはならない。念仏以上の善などないのだから。
ただし、念仏は自分で為す善ではないので、念仏を自力の修行だと思ってもならない。
念仏は、救っていただいた阿弥陀如来への感謝に過ぎないのである。

それを想えば、ジョセフ・マーフィーは、実に調和ある教えを説いていた。
まず、神は決して罰することはない。
そして、我々は、神が、我々を豊かにする方法、健康にする方法を知っているということが分かりさえすれば良いのだと。
後はただ、任せてしまうだけだ。
マーフィーは、決して伝統的なキリスト教の教義を説く牧師ではなかった。
非常に進歩的な宗教者であったが、それが親鸞的なのである。親鸞がいかにラジカル(急進的)で、当時の仏教界において過激に思われたかが分かろうというものと思う。









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