人間は、最終的には自我をできるだけ滅ぼして、無我、没我にできるだけ近付かなければならないのだが、いったんは、個性的な強い自我を構築する必要がある。
「自我を消せ」という聖者的使命は大人のものであり、立派な大人になるまでは、その若いエネルギーを全力で使って、個性的な人間、つまり、自分らしさを持っている人間になることが必要だ。
だから、まだ未熟なうちに悟りすました顔をするのは滑稽だし、逆に、いい大人になって、個性を主張するのも愚かである。

つまり、人間の不幸は2つなのだ。
(1)青年期を過ぎるまでに個性的で強い自我を構築できない
(2)大人になっても、いつまでも個性を捨てられない

◆(1)について
子供の時に、親に過度に甘やかされたり、親や学校に特定の思想を受け入れるよう強要されたりすれば、自分らしい自我を構築できず、自我は非常に不安定な、弱いいびつなものになる。
また、所詮、学校みたいな計画的管理社会では、本当の個性を磨くことはほとんどできず、また、どんな名著であっても、本を読むだけでは、本当のことは何も分からず、鍛えられることも当然ない。
本当の自分らしさを得るためには、自立性が要求される社会で鍛えられるしかない。つまり、苦労して働かなければならない。しかし、ニートになって働かない、あるいは、働けないならそれができないのだが、これは大きな悲劇である。
◆(2)について
成功して富や名誉を得ると、自我を守ろうとするし、また、金や権力の力で自我を守りやすい。それは一見、快適で幸福なことのようだが、そのために自我を手放すことができなくなる。これがやがては、必ず悲惨に導くのだから、これほどの不幸はない。
大社長とか大先生のような人達は、自分の主義、価値感、嗜好に最大の重きを置き、人々をそれに従わせようとする。自分では謙虚でいようと思っている場合も少なくないのだが、どうしても自分に甘くなり、実際は傲慢そのものだ。
しかし、そんなふうに自我を肥え太らせていると、どんどん苦しくなってくるのは、むしろ天の恵みである。家族や友人達が離れていく中で、自分の誤りに気付けば良いが、改めることがないと、さらに不幸なことが起こる。例えば、子供に自分の考え方を押し付けて、子供が駄目になる。多少でも自立性が育っている子供の場合は離れていくが、子供の精神がまだ幼い場合は可哀想なものだ。その子は、ニートや、悪ければ、異常者、逸脱者になるしかない。
(ただし、ニートはニートでやり方もあるのであるが。)

上のようなことは、直接につきつめるとドロドロしてしまって収拾がつかなくなるので、方向を変えて話そうと思う。
CLAMPの『ちょびっツ』という漫画とアニメ(漫画とやや内容が異なるが、アニメの脚本もCLAMPが書いている)は、表面的なストーリーの奥に、深い意味を持たせたもので、おそらく著者達は神話を描きたかったのだろうということが分かる。
記憶を消された人型パソコン(アンドロイド)のちぃは、無垢、純潔、天真爛漫という言葉そのものの、見かけは15歳の、天使のような美少女だ。
しかし、彼女は、「私だけの人」を探す使命を持つ。
そして、ちぃは、秀樹という「私だけの人」を見つけた時、あるプログラムを発動させる。そう仕組まれていたのだ。
「私はやらなければならない。私と私だけの人とで」
CLAMPは、作品中、何かを最後まで「あれ」と表現したり、「私だけの人」の真の意味や、「私と私だけの人で行うこと」が何かも一切述べていない。
これは、単なる1つの考え方と思って欲しいが、「私だけの人」とは、人が持つべき本当の個性、強い自我である。
そして、「私と私だけの人」でやらなかればならないこと、つまり、「私と私の真の個性」でやらなければならないこととは、その個性、自我を滅ぼすことである。
実は、『ちょびっツ』は、その後の物語が凄いものになるはずだが、CLAMPは続編を描くことは多分ないだろう。
他のCLAMPの作品、『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』『ツバサ・クロニクル』、最近では、共同制作の『BLOOD-C』なども、どれも深い意味のある神話のようなものだが、それを表だっては隠し、潜在意識に働かせようとでもしているのかもしれない。
尚、下にご紹介した『ちょびっツ』の北米版ブルーレイは、リージョンコードが日本と同じなので、国内の再生機で見ることができるはずだ(特殊な例外もあるようだが)。驚くほど安価である。
ところで、CLAMPとは4人組の女性漫画家のユニット(集団)で、素晴らしい作品を描くのだが、個人的には女性特有のいやったらしさも感じる。まあ、それが必ずしも悪いのではないかもしれないが。









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