「沈着冷静」なんて言葉を聞くと、誰もがそれに憧れるのであるが、「自分はそうだ」と思うと、恥ずかしくて自嘲せざるを得ない人が大半なのである。
「沈着」とは、落ち着いていて、物事に動じないこと。
「冷静」も大体同じで、感情に左右されずに落ち着いていることだ。
つまり、ほぼ同じ2つの言葉を重ねて心が静かである姿を強調して表しているのであり、「沈着冷静」と言っても、「冷静沈着」と言っても良いのである。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の中にある、「決して怒らず、いつも静かに笑っている」というのが、まさに、沈着冷静な態度というものだろう。
そして、この詩の最後は、「みんなにデクノボーと呼ばれ、誉められもせず、苦にもされず、そういうものに私はなりたい」であるが、「そういうもの」でありながら、沈着冷静でありたいと思っているはずなのである。
この詩が愛されるのも、これに流れる慈悲心や人間らしさと共に、沈着冷静という人間の理想があるからと思う。
人々は、それほど、冷静沈着に憧れるのである。
『雨ニモマケズ』からの引用を続ける。

南に死にそうな人があれば
行って、恐がらなくていいと言い

これも、恐がって心を乱している人に、冷静沈着になるよう諭すということであるが、それをしようとする者は完全に冷静沈着でなければならないのである。

北に喧嘩や訴訟があれば
つまらないからやめろと言い

というのは、まさに、沈着冷静になれと言っているのであるが、それを言う者自体が興奮していては仕方がない。
完全に冷静沈着な者が言ってこそ、争いは収まるのである。

では、これほど素晴らしい冷静沈着であることが、なぜそれほど難しいのだろう?
それは、1つには、人々は、冷静沈着であることを、どこか道徳的に考えているからだ。
つまり、理想ではあっても、実際の役には立たないものだと思っているのである。
どういうことかと言うと、実際に役に立つのは、知識や論理的な思考のようなものであり、冷静沈着であることに本当の力があるということを見損なっているのである。
これも、知識偏重で、精神をなおざりにする学校教育のせいであるが、物質主義の世の中では、大人が、目に見えるものしか存在しないと信じているのであるから、仕方がないのである。
医学だって、心身医学という、心を癒すことで身体も治すという考え方も少しはあるが、いまだ、9割までは物質医学であり、薬で化学的作用を起こさせ、悪いとことを切って捨てれば良いという考え方なのである。
こんな世の中では、冷静沈着というのは、どこか空想的な理想に感じられてしまい、その力が分からないのだ。
冷静沈着が現実の力であることが認識できれば、それを得るためにもっと熱心になるだろう。
そして、冷静沈着こそ、最大の力なのだ。
聖書には、「心を静め、自分が神であることを知れ」と書かれているが、物質主義に陥った者には、その意味が理解できない。

古代中国の神仙の中でも最高位と言えると思う、老子や彭祖(ほうそ)は、つまるところ、道を得る・・・その1つの形が、仙人になることであるのだが、そのために必要なことは、心を静かに保つことだと述べているのである。
その他にも、適切な食事をしなさいとか、性エネルギーを浪費しないように気をつけなさいと言っているが、それらも、心の静かさ、つまり、冷静沈着を得るための手段でしかない。
ラマナ・マハルシは、最高の修行とは、「適切な睡眠、適切な食事、適切な会話」であるという、ごく平凡なことを言ったが、これが、心の静かさを得る偉大な修行なのである。
偉大な方々のあらゆる言葉を吟味し、それらを心という実験室で長い時間かけ、熱を加え、拡散(かき混ぜる)し、ろ過し、精製(混じり物を除く)し、精錬(不純物を除く)することが、本当の仙丹(仙人になる薬)を作ることであり、真の錬金術なのだ。
そして、その成果は沈着冷静であり、神になることなのである。

冨田勲さんが制作した『イーハトーヴ交響曲』の、『雨ニモマケズ』の荘厳な合唱を聴くことは、冷静沈着の神的な力に目覚めるのにとても役に立つだろう。
この交響曲の最後の第7楽章『岩手山の大鷲』の終り・・・つまり、この至高の交響曲の最後の最後なのだが、歌い終わった初音ミクが見せる姿が、まるで宇宙のドーン・コーラスを思わせるもので、人々の心を浄化させる救いであると私は確信している。今年は、この交響曲の全国講演があるので、多くの人が見られればと思うし、映像製品も早く出して欲しいと思う。尚、テレビ放送はされたが、NHKもケチケチせず、再放送をすべきだろう。









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