漫画等で、児童を対象とした性的描写を禁止する法律を政府が施行しようとすることに対し、日本の財産たる漫画文化を創造した著名な漫画家達が異論を唱えた。
その中で、永井豪さんが、「僕は『ハレンチ学園』で世に出たが、そんな法律ができたら、この作品は出せなくなる」と言われていたのを覚えている。
『ハレンチ学園』は、小学校を舞台に描かれたギャグ漫画で、永井さんが言われる通り、性的な描写が多いと言われる。とはいえ、これは半世紀近くも前の作品(1968年連載開始)で、近年の漫画の過激な性描写に比べると大人しいものかもしれない。
だが、永井さんは、当時、学校やPTAから、「人格を否定される」ような糾弾を受け、テレビでは、「真面目な番組」に引っ張り出され、晒し者にされながら辱められらたようだ。
当時の映像が残っているなら、社会暴力とはどういうものかを示すために、是非、DVD等で販売していただきたいものであるが、昔とはいえ、一般PTAの方々も映っているだろうから、そうもいくまい。つまり、当時は正義の立場だと思い込んでいたような人々は、実際は、現在の専制国家も顔負けの暴力を振るっていたのである。
また、永井さんは、後に、大体でこんなことも述べている。
「『ハレンチ学園』での私への迫害振りは凄かったが、不思議なことに、同じような作品の『あばしり一家』は全く非難、批判されなかった。それで分かったが、『ハレンチ学園』は、教師というものを馬鹿にしたことに対して、学校や教師が攻撃してきただけのことなのだ」
当時は、教師はひどく威張っていたらしい。実際、立派な先生も多かったのだと思うが、教師の権威は高く、教師の影を踏むこともはばかられる風潮であったようだ。
『ハレンチ学園』では、奇怪で、誰が見ても馬鹿にされるような教師達を沢山登場させ、「偉い」教師の権威を否定したことが攻撃された真の理由であり、「猥褻」というのは、取ってつけた理由に過ぎなかったというのである。多分、ほとんどその通りと思う。

ところが、今日では、その「本当に問題されるべきことでなかった」漫画の性描写を、本当の問題にしようとしているのだ。
とすると、ここで鋭く考えなければならないことがある。
永井さんの言われることが本当なら、昔、永井が糾弾された理由は、「猥褻さ」ではなく、「権威の否定」だった。
つまり、今回も、他の問題がいくらでもある中で、政府がわざわざ、漫画の性描写をスポット攻撃する真の目的は他にあるということだ。
そこを良く考えて、問題に対応しなければならないのである。

結局、永井さんは、社会暴力の味を嫌というほど味わい、それをテーマにした作品を描くことで大きくなり、世界的に尊敬される大クリエイターになれた。
世の中の本当の成功者というのは、「あの時、あの人がいじめてくれたおかげで私は成功できた。あの人には感謝しいている」と、本気で思っているものだが、永井さんも、学校や教師やPTAに虐待されたおかげで成功したのも確かだろう。

もし、『ハレンチ学園』の読者が、深刻な性犯罪でも犯していたら、永井さんは本当に潰されていただろう。しかし、膨大な読者がいて、中には変な人もいたはずだが、そんなことは起こらなかった。ここもよく考えるべきことである。
一時、テレビドラマで、格好の良い人気アイドルの男性がナイフを使ったところ、子供達の間でナイフ所持が流行り、傷害事件が発生したことがあった。
ところが、馬鹿げているのは、その時、「ナイフが悪い」となって、ナイフの所持が徹底して禁止されることになったことだ。
悪いのは、そのドラマであり、ナイフではない。ドラマを作った者の思想や人間性に問題があるのに、何の罪もないナイフに責任が押し付けられた。
アメリカの禁酒法で、酒の製造、販売が禁じられることで、闇酒、闇バーが爆発的に増えて、それがギャングの資金源になったように、ナイフの所持を禁止したおかげで、かえってナイフによる凶悪犯罪は増えたのである。淫行条例で、逆に援助交際が爆発的に増えるようなものだ。
禁酒法の教訓くらい、ちゃんと学んでおくべきなのである。
そして、今回も、漫画等の描写に、およそ自分が屈折したような人でないと思いつかないような規制をすることで、永井さんの作品では決して起こらなかった深刻な性犯罪が、今度こそ起こるのである。









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