私はニートを数年間やった後、ある販売会社のフルコミッション(完全歩合制)のセールスマンとして採用された。ただし、行けば誰でも採用されるところだった。
その面接からの帰り、私は書店に入って、ジョセフ・マーフィーの『あなたも金持ちになれる』を買った。
この数日で、久し振りに読み返してみたが、当時は軽く読んだつもりが、よく憶えていることに驚いた。つまり、心の奥に刻み付けられている言葉が多かったのだ。
そして、実に素晴らしい本だということが、改めて分かるのである。

私が就いたフルコミッションセールスの仕事は、10人が入ってきても、一月後に1人残っているかどうかという厳しいものだった。
売らなければ1円ももらえず、しかも、全く知らない土地に1人で行って、片っ端から訪問するしか方法はない。
引きこもり気質の私に、これほど辛く、向いていない仕事はない。
しかし、当時は確かに苦しかったと思うが、思い返してみると実に楽しく、学生の時にはついぞ味わえなかった青春の思い出になった。
収入は少なかったが、まがりなりに1年勤め、次もまた、同じ仕事に就いたが、ここでは、新人の時に、強豪セールス達を押しのけて、小規模ではあったが、セールスコンテストで優勝した。
これらは全て、マーフィーの本を読んだおかげであった。

世間では、マーフィーの本は、物質的な望みを満たすものという面にばかり注目されるが、この『あなたも金持ちになれる』の、特に後の方の章は、実に高貴な精神の教えが説かれており、まるで、福音書やバガヴァッド・ギーターといった聖典のようであるが、現代的に書かれていて分かり易く、しかも、現実的な面・・・つまり、物質的なことも、全く省かれている訳ではなく、むしろ、豊富に書かれている。
私は、今では、これを読むと、ルドルフ・シュタイナーの、アーリマンとルシファーの話を思い出すのだ。
アーリマンもルシファーも共に悪魔だが、アーリマンは魔王で、ルシファーは堕天使の長と見ることもできるかもしれない。
シュタイナーは、ルシファーは人類を熱狂や神秘主義に落とし込ませるという。一方、アーリマンは、人類を冷淡さと物質主義に落とし込む。
イエス・キリストがこの世に生まれたのは、神秘主義と物質主義のいずれにも偏らないバランスを取るためであったとシュタイナーは言う。
もし、イエスが現れなければ、人類は、完全にアーリマンに支配され、極端な物質主義に落ち込み、目に見えるものだけしか分からず、心を単に化学的・電気的な作用と見なし、形式的に物事を厳格に規定する、全く夢のない世界になっていた。だが、イエスがいたので、人類は、心を貴ぶことを捨てず、熱情や無垢さを残すことができた。
だが、今や、ますます、アーリマンの支配は強まり、人類は物質主義に突き進んでしまっている。
ジョセフ・マーフィーは、従来の教会のような精神至高主義や、金さえあればいいという物質主義のいずれも間違いであり、そのバランスをとってこそ、人間は幸福になれることを教えているのである。
だが、マーフィーの教えを個人的に解釈して、「マーフィー法則で儲けて、いい思いをしよう」とばかり言う低レベルな本が沢山出てきてしまった。これは、アーリマンに与(くみ)し、幼稚な人間を物資主義に誘い込むものでもある。
私が、マーフィーの本は、必ず、マーフィー本人が書いたものの良い翻訳を読むことをいつも奨めているのは、そんな理由からだ。
また、マーフィーの本を日本に紹介した大島淳一さん(実は渡部昇一さん)も、独自にマーフィーの本を書いているが、それらは、やはり彼の個性の影響が大きく、あまり合わない、つまり、良い結果にならないという人も多いと思われるのである。
とはいえ、渡部さんの貢献は大きなものである。

ジョセフ・マーフィーの教えは、聖書やバガヴァッド・ギーターのような聖典と、ユダヤ人や華僑の金儲け術のバランスを取り、物質的な豊かさと、精神的な安らぎを共に満たそうとするものであり、そういった意義を思いながら読むと良いと思う。
だから、儲けの額は、ユダヤの金儲けの達人達と比べると、スケールが小さいように感じることもあるかもしれない。
しかし、その人の器量を超えた富は、その者の精神を乱したり、穢す危険が大きく、結果、必ずや不幸にしてしまう。
名高い大富豪の大半は、実は、家庭においては悲惨な状態であったことは、後で明らかにされているものである。
数千億円でなく、数十億円までなら、彼らも幸せであったかもしれないのだ。
我々凡人では、欲張っても年収一千万円位までが、高貴さを保てる限度かもしれない。1家族なら、見栄や過ぎた贅沢をしなければ、十分に豊かな額である。
金儲けの神様と言われた邱永漢さんすら、25年ほど前のことではあるが、「金は、実際に使える額が月百万円を超えれば同じだ」という趣旨の『賢者は中金持ちをめざす』という本を書かれている。当時と今で、さして貨幣価値が違うということはなく、むしろ、今ほどのディカウントが発達していない当時の方が物価が高かったと言えるだろう。
まして、独身者であれば、ある程度の収入(500~700万円)があれば、時間やエネルギーを、金儲けとはもっと違うところに使うことが、特に今の時代は良いことであると思う。
とはいえ、やはり凡人の場合は、ある程度の金がなければ、やはり良くなく、バランスを取らなくてはならない。
そして、マーフィーの本を繰り返し読めば、誰だって、十分に豊かな額を得ることは可能である。
マーフィーの本を読んでもうまくいかないとすれば、まず、読み方だ。たかが1回も熱心に読めないなら、やはり、「縁無き衆生は救い難し」であろう。
もし、マーフィーの本を読んでも、十分な金が得られないなら、早起きをし、食を慎むことだ。また性欲を煽る商品やサービスとは一切、手を切らねばならない。
うまくいっていない人は、朝が遅く、大食で、あまつさえ、猥褻なゲームのようなものを平気でやっていることが多いのである。
実際、マーフィーの教えは、実に簡単で、非常に効果的である。









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