アメリカのプロ野球の監督って、誉め方が上手いものだなと思うことがある。
マスコミを通じての話はあまり信用しないが、オフに選手が帰って来た時、テレビ番組で直接話すのを聞いても、やはりそうなのだと思う。
とにかく、選手について、悪いことをほとんど言わない。
確かに、誉めることが大切だとはよく言われる。
だからといって、真似したつもりで、そこらの会社の上司や教師や親が、部下や生徒や子供を誉めても、まるっきり駄目なのだ。
会社で、若い社員同士でこんな話をしていた。ある上司のことについて、「あいつにだけは誉められたくない」と言っていたのだ。
大リーグの監督もそこの会社の上司も、言うことは同じようなものなのに、何が違うのだろう。
私は、今日寝ていて、夢の中で、松井秀喜選手になっていた。松井選手といえば、最近、あまり調子が良くない。
私は監督に何か言われた。途端に、心が落ち着いた。
はて、何を言われたかというと、夢の中のことだ。何も覚えていない。
夢は、自我意識が無い状態で見ているので、自我である心にはあまり記憶が残らないものだ。
しかし、目覚めの瞬間の夢であれば、ほんのわずか、シンボルとして、記憶が心の中に入り込んでくる。覚えている夢は、目覚めの前のものだけだ。
それで、こんなことを覚えていた。2つの玉が見えた。その2つがくっついたのである。その時、落ち着いたのだ。
1つは大きな玉で、1つは小さな玉だ。
つまり、こういうことだ。
下手な誉め方は、2つを分離させるが、上手い誉め方は、2つをくっつけるのだ。
大きな玉は中心である大我(真我)だ。小さな玉は自我だ。
以下に説明する。

昨夜、このブログで、戦後の日本の教育では、「胸を張って、腹を引け」という教育が子供を駄目にしたと書いた。
この姿勢は、腹という中心から、胸という自我を離し、頭は、自我が中心だとみなしてしまうのだと気付いた。
人間は、精神的なことより、まずは身体的な正しさを得ることで、心も自ずと収まるのである。
だから、良い姿勢で立ち、良い姿勢で座らないといけない。
では、良い座り方、良い立ち方とは何かというと、押されてもよろめかない座り方、立ち方だ。
胸を張って、腹を引き、膝を伸ばして、すっくと立っていると、後ろから押されると簡単につんのめる。
しかし、腹を少し前にして、肩と腕をだらりとし、背筋をまっすぐにして、膝が緩んでいると、安定して、どこから押されても簡単にはよろめかない。

日航の社長や日銀の副総裁だった柳田誠二郎さんは、心身共に病んでいた時に、長く座禅をやったが、ますます駄目になり、勧められて岡田虎二郎に静坐を教わりに行った。
そして、静坐して座っていると、虎二郎は柳田さんの胸倉を掴み、ぐっと下に降ろした。
その姿勢で静坐すると、柳田さんは、たちまち心が晴れやかになったという。
柳田さんは、鳩尾(みぞおち)を下に降ろすという言い方をしたが、私はイメージが掴めずに苦労した。
要は、柳田さんは、座禅をしていた時、胸を張ってがんばり、重心が上に上がっていたのだ。
岡田虎十郎はそれに一瞬で気付き、胸を降ろさせて、重心を下げてやったのだ。
別に座禅が悪いのではなく、座り方に問題があったのだ。

合氣道の達人、藤平光一さんは、著書で、「重みは下にある」と言うと、氣が出るというが、これも、下を意識することが、上がっていた重心を下に降ろすことで心が安定するという意味だろう。それだけで、奇跡のような効果が確かにあるのである。
軍隊の「胸を張って、腹を引け」は、「重みを上にやれ」と言うようなものである。戦後の日本教育は本当にひどいものだったとぞっとするのである。

私が日頃お奨めする、腕振り運動も、下腹を意識してやるのだが、これも重心を下げるということだ。
少し前に、腕振り運動をすると、ぐらぐらしてしまって上手くやれないという方のコメントがあったが、普段から、重心が上に上がってしまっているのだろう。
私は、下腹を意識してやるようコメントを返したが、ついでに言うと、足をしっかり踏みしめていることを確認してからやるのも良いと思う。
まさに、腕振り運動は、重心を下に下ろし、腹という中心に心を一致させることも出来るものだ。つくづく、万能運動であると思う。

「胸を張って、腹を引く」姿勢は、重心が上がってしまって、中心である腹から心が離れる。重心が上がっていると、心も上がりやすい。つまり、緊張する。
重心を降ろし、腹に意識を持っていくと、心も安定して上がらない。
上がっている時ほど、自我は自己を主張して、自己中心的になる。逆に、安定した心は、中心である大我に溶け、忘我になる。
立っていても、座っていても、どこから押されても、揺るがない姿勢であることを意識すれば良いと思う。
普段から、腕振り運動で、重心を下に降ろす訓練をすれば良いだろう。
これだけで、怖いものなしであることは間違いない。

尚、かなり個性的であるが、D.H.ロレンス(『チャタレイ夫人の恋人』の著者)が、腹の神秘を考察した幻の名著『無意識の幻想』を下にご紹介しておく。









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