テレビで一度は見たことがあると思うが、例えば、父親が阪神タイガースの熱狂的ファンで、自分の小さい子供にもそういった格好をさせ、応援グッズを持たせ、自分はビールでもひっかけて、一緒に声援を送ることを楽しんでいる。
これを見て、微笑ましいと思うだろうか?
私は、心底ゾっとする。
これは、よほど幼い時は別かもしれないが、やがて子供は恐ろしく苦しくなるのだ。
「いや、子供も楽しんでいる」
と主張する父親もいるだろうし、実際そうである場合もあるかもしれない(私はあり得ないと思うが)。
しかし、子供は、自分さえ我慢して合わせてやれば、普段恐いお父さんが愛想良くなるので、その方が楽だと思っているだけだ。
父親、あるいは、母親の趣味に同調している子供なんて、みんなそうなのである。
それは、子供の心に歪みを生じさせる。
大人になって、変質者や倒錯者、他人の痛みにひどく鈍感な者というのは、幼い時に、親の趣味に同調することを強要された哀れな子供だったのだ。

友達がいないとか、モテないというのは、男女に限らず、自分の趣味を最優先する者なのだ。
そんな人というのはやはり、子供の頃に親に趣味を押し付けられてきたのだが、そんな親の悪い面はしっかり真似しているのだ。
ただ、ごく一般的な趣味を持つ者同士なら、うまくやっていける場合が多いが、その場合も、大抵は誰でも持っている、特殊な方の趣味は抑えるだけの知恵があることが必要だ。
まして、特殊な趣味しか無い者は、まあ、生涯孤独であることは覚悟した方が良い。

職業に貴賎は無いというが、趣味も同様だ。
むしろ、親が、自分の趣味を高貴だと思っている場合は始末が悪い。
クラシック音楽、武道、芸術、哲学、宗教、学問といったことへの強いこだわりは、「これは趣味じゃない。高尚なものだ」と言いたいだろうが、やはり個人的な趣味でしかない。
父親が特別な道の名人みたいなものである場合も、父親に知恵がないと、大抵、子供は問題を起こしているものなのである。そんな父親は、子供に自分の趣味を押し付けることを我慢できないばかりか、それを何か素晴らしいことであると大誤解しているのだ。

ある父親は、少なくとも3つの趣味があったが、それらに物凄いこだわりをもっていた。
それらについて語り始めると、目が座り、とうとうと語って止まらず、酒でも入っていると恐いほどで、逆らう者は決して赦さないという雰囲気だった。対等に話せる私でさえそうなのだから、子供は決して口を挟めない。
結局、子供は自殺した。私は、子供の方の趣味も知っていたが、父親のと全く違う上、父親は、子供の趣味に関して、ほとんど知らず、知ってもすぐに馬鹿にした。自殺されて当然である。
自分の趣味を押し付ける父親は、大なり小なり、その危険を子供に与えているということは自覚したがいい。

現在、芸能界のドル箱の一人と言われる歌手は、幼い頃から、演歌ファンの父親に猛特訓され、現在は、分野は異なるが人気歌手になっている。
彼女は、既に亡くなっている父親が好きだったことと、いつか演歌をやりたいと発言することもある。だが、私は疑っている。
彼女のそんなことを知っている程だから、私は彼女のファンなのであるが、彼女には、どこか人工的な雰囲気を感じるのだ。悪い言い方をあえてするなら、「わざとらし過ぎる」のである。
それは、精神分析学者の岸田秀さんが、三島由紀夫や芥川龍之介に感じるものに似ていると思う。自然な自我の構築が出来なかったので、自分の命を守るため、不自然な自我を急ごしらえで構築したのだ。
彼女は、あるアニメのヒロインの一人の声優をやったことでブレイクしたのだが、その役柄というのが象徴的だ。
その少女は、母親に虐待まがいの扱いをされるが、母親は自分を愛していると信じているし、自分も母親を慕っている。自分が幼い頃の優しかった母親をよく知っている。
母は、不器用なだけだと思い込み、何をされても母のために尽くす。
彼女は思う。「母親のおかげで、特別な訓練を受け、強くなった。母は偉大であり、きっと母は、いたらぬ私のためを思ってきつく当たっているのだ。私には分かる。親子なのだから。」
しかし、優しかった母の記憶は、母に植え付けられた偽りの記憶だった。そして、最後に母に言われる。
「お前は私の娘じゃない。お前のことはずっと大嫌いだった」
だが、何を言われても、彼女の母を慕う気持ちは変わらない。
まさに、彼女が演じるに相応しい少女だった。
彼女は幸運なところがあったのだろう。特別な才能があったし、父親にも、きっと普通の人とは異なる素晴らしいところがあったのだ。
しかし、普通は、あってはならないことなのだろう。ただ、全ては運命でもある。
そう、そのヒロインの少女の名は、運命を意味するフェイトだった。
アニメ放送から6年以上経ち、この夏、このアニメの2作目の映画が公開される。主題歌も彼女である。彼女は、6月にも別の主演アニメが公開だったと思う。
大変な売れっ子である。









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