中学生くらいの頃、道を歩いていて、周りの家々の屋根を見上げ、「あそこまで飛び上がることができたら、楽しいし、格好いいだろうな」と思ったことがある。
屋根の高さが分かれば、そこに飛び上がるために必要な瞬発力は、高校の物理で計算できるだろうが、それを、生身の人間の筋肉が発生させるのは不可能だろう。
だが、飛びたいと思うからには、飛べるのかもしれない。人は、出来もしないことを望まないものだ。望むからには出来るのだ。科学なんてものを知ったから、飛べなくなくなったのではないだろうか?
英国の作家、チェスタートンは言ったものだ。「天使が飛べるのは、自分が軽いと思ってるからさ」。

『エル・カザド』というアニメで、エリスという名の少女が、異常な跳躍力を発揮することがよくあった。それは、彼女の超能力のためであるが、それは、エントロピーは必ず増加するという熱力学の法則を破るものとして知られる「マクスウェルの悪魔」を操る力によるものだ。エントロピーとは、簡単に言えば、乱雑さのことで、例えば、熱いコーヒーも、やがて冷えるのは、熱が乱雑に広がるからだ。しかし、マクスウェルの悪魔が働けば、コーヒーはどんどん熱くなり、蒸発してしまう。
科学的に、マクスウェルの悪魔は存在しないことになっているが、その割には、それに関する研究者は必ずしも減っていないという奇妙なものである。
また、この世界とは異なる世界には、エントロピーが減少する(乱雑な状態から、勝手に秩序立った状態になる)世界があるという説もある。
もし、マクスウェルの悪魔と仲良くなれば、エネルギーは無限に得られ、スーパーマンのように空を飛ぶことも可能である。

ところで、空中浮揚現象というものが、実際にあるという話は多い。まあ、そういったことを起こすのは、やはりマクスウェルの悪魔なのであろうから、科学的にありえず、それらの話は嘘であるということになっている。
しかし、まっとうな科学者にだって、マクスウェルの悪魔とお近づきになることを諦めていない者は多いことはさっき述べた。
ヨーガや仙道の行者の中には、体重を一瞬で軽くしたり、空中に浮かび上がる能力を持つ者もいると言われるが、彼らが人前でそれを披露することも、一般の人を相手に、自らがそんな力を持つと吹聴する者もいない。
また、UFOも、ロケットやジェットの力を使わずに飛び、その飛行原理は我々には不明だが、UFOの映像なら、割に見られるようになってきたと思う。
空中浮揚だって、知っている人にとっては、さほど特殊なことではないのかもしれない。

マクスウェルの悪魔は、ちょっと人見知りだ。それは、形があるものではなく、量子の中にある意思のようなものだ。人間は意志を持つので、マクスウェルの悪魔もそれに反応し、活動してはいけないところでは何もしないのかもしれない。
スコットランド出身の哲学者マード・マクドナルド・ベインは、子供の頃から、高いところから飛び降りて、大地に到達する直前に空中で停止することができたという。
世界的量子物理学者フレッド・アラン・ウルフが、その道に入ったきっかけは、子供の時、2階から1階に、階段を踏んだ憶えもないのに到達したことだった(ウルフはテレポーテーションだったかもしれないと考えているようだ)。
だが、そんなことをやったことのある人は、意外に多いのだと思う。

萩尾望都さんの短編漫画に『ハワードさんの新聞広告』というものがある。
お金持ちのハワードさんは、社交の場で人気者になりたくて、世にも珍しい「飛ぶ子供」である少年を、その母親から買い取った。
ハワードさんは、お客様の前で、その少年に飛ぶことを命じるが、その少年は従わない。
ハワードさんが、脅しても、なだめても、少年は決して飛ぼうとしない。
そのうち、客である1人の婦人が言う。
「あなた、本当はただの子供じゃないの?」
少年は、「ただの子供だよ」と答える。
騙されたと知ったハワードさんは怒り、母さんのところに帰して欲しいと頼む少年に対し、一生閉じ込めてこき使ってやると言う。
その時・・・
少年は飛び、高いところにある窓に体当たりしてこれを砕いて壊すと、血まみれになりながら飛び去った。少年は言った。「知らなかったの?ただの子供はみんな飛ぶんだ」
その後、反省したハワードさんは、この少年に謝るため、自分のバースデイ・パーティーに、「ただの子供」全員を招待すると、新聞に広告を出した。しかし、パーティーが始まっても、誰も来ない。ハワードさんは知らなかったのだ。ただの子供は、新聞なんて読まないことを。









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