言葉の力で、驚くべき心身の治療を行った人として、私は、フランスの心理学者エミール・クーエ(1857-1926)と、アメリカの精神科医ミルトン・エリクソン(1901-1980)が思い浮かぶ。
共に、その治療成果は驚嘆すべきものだった。
クーエは、クエイズムと呼ばれる暗示法の創始者と言われ、彼は医者ではないのだが、彼の治療所には常に多くの人が押しかけていた。長年の脚の疾患で歩くことができずに担ぎ込まれた患者が、十数分後には元気に走り回っているというのも、彼のところではありふれたことだった。
精神の病気は治療が難しいと言われる。あのフロイトですら、極めて熱心に治療を行う精神科医でありながら、実際に治療に成功したことはほとんど無かったらしい。しかし、エリクソンは、治療を行ったのかどうか分からないようでいながら、あまりに見事に治してしまい、魔法を使って治しているのだと言われるほどだったという。彼は知らない間に患者をトランス(変性意識)状態にし、ありふれた会話をしているような中で治療を終えてしまった。それは、一般に言われる精神病に対してだけではなかった。例えば、どんな教師もお手上げの不良学生と一言二言会話すると、数日後には、もうその学生は更生していた。
ところで、クーエにしろ、エリクソンにしろ、彼らの治療に関して、一般の医学や心理学の範囲を超えた説明がされることはないし、彼ら自身、世間の常識に反するようなことを語ったこともない。エリクソンなどは、超能力研究で有名なデューク大学のライン教授の被験者になり、ライン博士に完全な超能力者と認められてしまうが、超能力なんてものはないことを、自分がライン教授の実験でやったタネを明かすことで説明したこともあった。
一方、世界的に知られる(一般的にはエリクソンより有名だろう)精神科医、心理療法家であるユングやグロデックらは、治療よりも、神秘的で驚嘆させられる思想において注目される傾向があると思われる。そして、実際に、治療成果はあまり高くないのではないかと思う。
クーエの治療などは実に簡単である。本1冊読むまでもない。マスターするのに10分かからないほどだ。ただ、1つの自己暗示の言葉を繰り返すだけである。

ところが、クーエにしろエリクソンにしろ、やはり神秘的としか思えないような治療例もある。例えば、クーエの治療は全て自己暗示によるものだが、言葉を理解しない赤ん坊にすら顕著な効果を見せた。
エリクソンは、いかに神秘的と見える治療も、彼自身は、論理的説明というものが出来、「なぜ治ったか分からない」といったことは全く言わないと思う。ただ、「無意識に任せた」とはよく言う。その無意識の働きもまた、決して神秘めかすこともないのだが、それが彼の説明の上手さのようにも思う。例えば、彼は、自分をトランス状態にして仕事をした時、無意識に任せてしまっていれば、自分では何をしたか覚えていなくても、仕事が終わっているという話もするのだが、それを聞き手に神秘的に感じさせないのだろう。

スコットランドの治療家で、神学博士、哲学博士のM.マクドナルド.ベインは、クーエの自己暗示の技法を評価しながらも、彼の治療は暗示だけではないと語る。彼には、強力な霊的存在の援助があったことを説明していた。
真偽は分からないが、クーエの教え通りにやっても、現実的には、クーエほどの成果は出ないのであるから、霊的なものかどうかはともかく、なんらかの秘密というものがあると考えるべきかもしれない。
エリクソンに関しては、彼の治療の秘訣は、彼の超人的な観察力にあると言われる。彼はポリオに感染し、高校生の時分、目玉しか動かせないような状態になり、その中で観察力を磨きに磨いたという。しかし、やはり彼の治療に、何か知られざる秘密があるようにも思うのも無理なことではないかもしれない。ただ、何が常識で、何が神秘であるかという解釈の問題のようにも思えるが、突き詰めれば、世間の常識を超えるものは、やはりあるのだろうと思う。
また、超人的な登山家、探検家でもあるM.ナクドナルド.ベインについては、彼の著作に表れた思想、哲学の高さが、彼の信頼性を示していると思う。







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