私は、体調が悪くなる度に思い出すことがある(そうは言っても、3年程前に1日1食の菜食者になってから、体調の悪い日はほとんどないのだが)。

1つは、夏目志郎さんという、中国出身の超一流セールスマンの本で読んだものだ。夏目さんが、寒い日に出張セールスに行っていた時のことである。夏目さんは、成果が出ればホテルに泊まり、成果が出なければ自動車の中で寝ると決めていたらしいが、その日は成果が出ず、雪が積もるほどだったが自動車の中で寝ていたらしい。昔のことで、彼の車(フォルクスワーゲン)は、停車中はヒーターが効かなかったようだ。見かねたホテルのオーナーが、料金はいいからホテルに泊まってくれと頼んだが、夏目さんは事情を話して納得してもらった。しかし、夏目さんは風邪をひき、高熱を発した。
だが、夏目さんは、アポイントメント(面会の約束)を取ってあった経営者に会いに行った。夏目さんの体調の悪さは明らかだったが、相手は「あなたの話は半分も分からない」と言いながらも、何かを感じて契約をしてくれたという。だが、それで汗をかいたら、風邪がぴたりと治ったらしい。夏目さんは、体調が悪くても、なんとかなるようなら、セールスを実施すれば、情熱が伝わるようなこともあるのではないかと書かれていた。
私も、当時セールスマンだったが、ある日、足を捻挫したことがあった。しかし、そのまま歩いて夜遅くまでセールスし、結局その日は成果がなかったが、見込み客をいくらか作った。そういえば、夏目さんも、事故で脚を折って入院していた時にある販売会社スカウトされ、治らないまま仕事を開始したらしい。
もう1つが、アントニオ猪木さんが、1975年に、インドの強豪、NWF世界ヘビー級王者タイガー・ジェット・シンに挑戦した試合で、この日、猪木さんは体調が最悪だったらしい。しかし、新日本プロレスの社長という立場もあってか、猪木さんは試合を中止せず、そのまま実施した。最高の名勝負となったこの試合(60分3本勝負)は、シンが初めて見せたアルゼンチン式バックブリーカーで2本目を取るも、3本目は、猪木さんが必殺のバックドロップを連発して勝利し、王座に返り咲いた試合だった。
格闘技でいえば、2007年に亡くなられたブラジルの柔術家ハイアン・グレイシーが、2000年の桜庭和志さんとの対戦で、練習中に右腕に大怪我をしながら試合をする前のメッセージが素晴らしかった。その内容は、「確かに事故があった。しかし、試合は予定通り行う。なぜなら、何の支障もないからだ。これはスポーツではなく、格闘技の戦いであり、怪我は無関係だ」といったようなものだったように思う。私も、体調が悪い時、戦争中の兵士なら、寝ていられるはずが無いとは、よく思ったものだ。

程度にもよるが、体調が悪くて休もうと思うなら、やっていることに情熱が無いのだろうと思う。まあ、ほとんどのサラリーマン、あるいは学生などは、仕事や学業にさほどの意義を感じておらず、当然、情熱もないだろうから、無理せず休めば良いのかなと思う。
だが、以前、保険のテレビCMだったと思うが、保育園の子供が熱を出し、「妻は仕事で無理だが、幸い、私が行ける」と言って、主人が子供を迎えに行き、そのまま帰宅してしまうというのを見て、首を傾げたものだ。いや、別にそんなことがあっても良いのだが、それはあくまで特例中の特例であり、CMにしろ、堂々と作って何度も流すようなものではとても無いと思う。
実際、世の中には、仕事が好きでも何でもなくても、どんなに体調が悪くても絶対に休めない弱い立場の人もいる。
我々が喜んで食べているチョコレートなどは、人身売買で連れてこられた子供達が危険な仕事をすることで原料が調達されており、それこそ、指数本切断するような大怪我をしても休めないのだろう。世界には、そんな状態の子供たちは驚くほど多いに違いない。
アンデルセンの「マッチ売りの少女」のモデルとも言われる子供は、冬の寒い日に、雇い主にビールを買いに行かされ、氷で滑ってビール瓶を割ってしまった時に目を負傷するが手当てを受けられず失明したと言われる。
それらに比べれば、首記にあげた、夏目志郎さんやアントニオ猪木さんらは、不屈の心は賞賛すべきであっても、幸せなんだろうと思う。
我々も、出来れば、体調の不良や何かのトラブルがあっても、多少の無理をしてでも敢行できることをやりたいものである。逆に言えば、それが出来ない人生など虚しいものに違いない。
松下幸之助さんは、それがオフィスだったか工場だったかは忘れたが、その見事な清掃振りを見て、それをやった清掃会社の社長を、新会社の社長にするよう命じたらしい。清掃会社の社長は自分の会社もあるし、未経験の分野でもあり、「とんでもない」と断ったようだが、「神様」松下幸之助の命令が実現しないはずもなく(当然、松下さんが理不尽な要求をするはずもないが)、結局、それを受けたようだ。やはり、仕事は情熱もってやるもので、竹村健一さんは、「嫌だけど家族のため」に勤めているなら、それは間違いであり、絶対、辞めて別のことをやれと著書で述べておられた。思慮も必要だが、忘れてはならないことだろう。







↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ
  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ