夏目漱石は、「草枕」の冒頭で、「智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。 意地を通せば窮屈だ。」と述べ、この世は住み難いと言う。
「情に棹(さお)さす」とは、情も川も「流れる」ものであることから、川に流されていくために棹を川底にさすことを、情にながされることの喩えとして風流に言ったものだ。
しかし、これらは程度の問題であり、ほどほどに智を働かせ、ほどほどに情を持ち、意地も引き処を考えれば良いのである。人によって、それを上手くやれるレベルは異なるが、それは失敗で学ぶしかない。即ち、経験がモノを言う。漱石よ、そんなことでボヤかず、もっと修行せい。男らしくないぞということになる。

しかし、これでは面白くないので、宇宙の英知で解決しておこう。

智を働かせたから角が立ったんじゃない。
誰が、智を働かせれば角が立つって決めたのだ。
智を働かせたからって角なんか立たんわい。智を働かせることと、角が立つことには何の関係もない。
まるで、試験に落ちたのは、カンニングした相手の答が悪かったせいだと言うようなものだ。
(※漱石は大学予備門受験の際、隣席の友人の答をカンニングして合格したと言われている)

意地を通したから窮屈になったんじゃない。お前は元々窮屈なのだよ、漱石よ!
尚、言うまでもないが、私は単に「草枕」の冒頭の文を借りただけであり、これが漱石の本当の思想だと言うわけでもなければ、本気で漱石を愚弄する気もない。このあたり、お断りしておく。

しかし、何かピンと来ただろうか?
もう少し続けよう。
「雨の日は憂鬱」って思うかもしれない。
これも同じで、雨が降ることと、憂鬱になることは関係がない。
そんなことはない。雨の日は濡れるし、傘は邪魔になるし、やっぱり、雨のせいで憂鬱だと言うかもしれない。
しかし、その言い分は、「憂鬱だから雨が降った」と言ってるようなものだ。そんなアホなと言うのか?しかし、「雨の日は憂鬱だ」というのも、全く同じくらいアホな話だ。
そんな下らないことを言う自分を忘れることだ。すると、どうなるかと言うと、ものすごい美少女が傘を持たずにポツンと立ってたり、スカートに濡れた傘が当たったかと思うと、ものすごいイケメンが平謝りに謝ってきたりする。
なぜ、そんなことになるのか?
それが命の働きなのだ。
命というのは、本来、よりよく生きようとするものだ。植物の種は、なぜだか分からないが、的確に水のある方に根を伸ばすのだ。あなたがイケメン嫌いの場合はいざ知らず、イケメンと仲良くしたら命が燃えるなら、命はそんなこともやってみせるのだ。
もちろん、たとえ話であるので、あまり本気にしてもらってもいけないが、それもあなた次第だ。つまり、美少女と仲良くなったら、命に良いなら、やっぱりそうなるだろう(命にとても悪い場合も多いが)。
私なんて、子供の頃、車がびゅんびゅん走る車道に目をつぶって何度も飛び込んだことがある。自己を忘れていれば、命は生きるためのことを、どんな手を使っても実現する。ただ、自己を本当に忘れていないと、その日が命日だ。イエスも「神を試すな」って言っただろう。神を試すなんて、自我をしっかり持っている証拠なのだ。
尚、「雨が降る。ゆえに、憂鬱」というのは、自我らしい言い分だ。自我は、時間という幻想を持っているので、雨が先で、憂鬱が後と思い込んでいる。自己を忘れていれば、時間は無いので、そんなことは思わないはずである。

命を大切にすることが自己(自我)を忘れることになる。
ただ、命を大切にすることを、自己を大切にすることと勘違いする人が多い。
自己を忘れるということを、命を失うことと間違えて自殺をしたりする。自己を犠牲にして命を守ることとは、どんなことかを見出さねばならない。
自己が満足することではなく、命が安らかなことを優先するのだ。命は飽食を望まない。飽食を望むのは自己だ。
命は、大した金を欲しない。大金を欲するのは自己だ。酒、タバコ、麻薬は、命を傷つけて、自己を守るものだ。
命は、あらゆる命と呼応する。自己を忘れれば、草木が語りかけてくる。
自己を忘れ、命を尊ぶ者はいつまでも若い。命とは常に若いのである。

命を守るためであれば願っても良いが、命はあなたより賢い。あなたの欲望の自我が欲しいと思っても、それが命を損なうものであれば、決して手に入らない。それどころか、願えば、かえって命を損なう。普通は、特に何も祈らなくても、必要なものはやって来る。
およそ、この世にある優れた修行の一切は、自己を忘れるためにある。それは、命を知るための修行だ。
一方、学校というのは、自己を増長させるためのことを行う。子供達は、命を損なうために学校に行かされるのだ。学習塾は、さらにそれに加担する。一生、取り返しのつかない習性を植えつけてしまうのだ。学校の優等生が、幸福に生きることは、ラクダが針の穴を通るより難しいのである。







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